研究課題/領域番号 |
20H03105
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
彦坂 晶子 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 准教授 (50345188)
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研究分担者 |
吉田 英生 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 助教 (40729852)
加川 夏子 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 講師 (60467686)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 紫外線(UV) / 青色光 / 赤色光 / 光修復 / 抗酸化物質 / CPD / フォトリアーゼ |
研究実績の概要 |
UV-B耐性には植物種や品種間差があることが知られている。本研究ではまず、試験に供試するコマツナ品種の選定を目的に、強度の異なるUV-Bを照射し、葉の可視障害や成長速度の差を調査した。また、これらのDNA損傷程度を明らかにするため、DNA損傷マーカーであるシクロブタン型ピリミジン二量体(以下、CPD)をELISAキットを用いて定量解析した。数品種で栽培およびUV-B照射試験した結果を基に、処理の有無によらず成長速度が斉一で可視障害やCPD蓄積が顕著である品種を選定した。 UV-B照射によって植物が蓄積する二次代謝物質の多くは色素物質や抗酸化物質であり、生合成の引き金には、a) UVBによる細胞・DNA損傷、b) 活性酸素(ROS)の発生、c) 直接的な関連遺伝子の発現などが報告されている。フォトリアーゼの修復効果では、主にa)を軽減することが予想され、b)やc)への影響は不明である。そこで今年度は選定したコマツナ品種を用い、UV-B照射でCPDが蓄積した品種に対し、UV-B照射後の青色光または赤色光を照射し、光修復(または光回復)を担うフォトリアーゼ活性を比較した。その結果、UV-B照射でCPDが顕著に増加し、その後、青色光照射によって赤色光よりCPDが顕著に減少することが明らかになった。ただし、3日間のUV-B照射+青色光の区では、抗酸化成分であるアスコルビン酸やベータカロテンなどが葉に蓄積していた。よって、CPDを減少させた要因として、青色光による光修復だけでなく、抗酸化成分や色素が葉の表層に蓄積したことで、UV-Bが葉の内側に到達するのを防いだ可能性も考えられた。次年度以降、CPDが減少した理由を明らかにするため、より短期間の青色光照射を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響で、プラスチック製品や試薬の入手が困難となり、研究計画の一部を次年度に継続実施することになった。しかし、今年度に着手できる内容については、早めに取り組むこととし、全体的にみると、大きな遅れは生じていない。
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今後の研究の推進方策 |
UV-B照射による抗酸化成分の蓄積と光回復酵素によるDNA損傷の修復とを分けて示すため、継続試験として、短時間のUV-B照射およびCPD量の計測を行う予定である。また、今後は赤色と青色光の割合を変化させた試験を行い、光回復に必要な青色の比率や光量について検討する。 抗酸化成分を含む薬用植物スイカズラにもUV-B照射を行い、抗酸化成分濃度およびCPD量の測定を行い、コマツナとの比較で光修復(回復)酵素の影響を調査する。最終年度はこれまでの成果を取りまとめ、UVによる障害や生育抑制を軽減しつつ機能性成分の増加に適した光環境を明らかにする。
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