研究課題/領域番号 |
20H03107
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井原 一高 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (50396256)
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研究分担者 |
間世田 英明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (10372343)
清水 和哉 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (10581613)
梅津 一孝 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (20203581)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 動物用抗菌剤 / 磁気分離 / 嫌気性消化 / 畜産廃水 / 抗生物質耐性菌 |
研究実績の概要 |
畜産廃水等の液相に残留する抗生物質の磁気分離除去法の確立を目的として,乳牛糞尿の固液分離後の液分に含有するテトラサイクリン系抗生物質の磁気分離法について検討を行った。抗生物質への磁性付与法として電気化学磁気シーディング法を試みた。除去率向上のためにpH制御法の有効性について検討した。対象溶液には高濃度有機物が含有するにが,除去率がピークとなる最適pHが存在することを明らかにした。 メタン発酵による乳牛糞尿に残留する抗生物質耐性菌低減について検討するため,乳牛糞尿に残留する抗生物質耐性菌の低減効果について,バッチ試験によって評価した。乳房炎治療のために乳牛に抗生物質が投与されたケースを想定し,セフェム系抗生物質であるセファゾリンを乳牛糞尿に添加し,その影響を調べた。その結果,オキシテトラサイクリン耐性菌は,中温メタン発酵によって低減できることを明らかにした。低減効果は耐性菌の薬剤の種類によって異なり,セファゾリンの添加は耐性菌の消長に影響を与える場合があることが示された。 遺伝子変異解析に基づく耐性菌出現における抗生物質濃度や影響因子の解明のため,抗生物質の濃度が変動する排水処理施設(WWTP)の生物処理工程に存在する特定のヒト病原性耐性菌や、消毒後のARGの挙動についてはほとんど知られていない。本研究では,レボフロキサシン(LVX)をラボスケールのシークエンスバッチリアクターに曝露し、それぞれのリアクターから分離した細菌に対して各抗生物質に対する最小阻害濃度解析により,多剤耐性に着目した抗生物質濃度変動下でのARBの出現を明らかにするとともに,ARGの自然界への拡散を防ぐために消毒によるARGの動態を把握することを目的とした。得られた結果は,WWTPの放流水が環境中に流出する前に,十分な線量と処理時間をかけて消毒を行えば,耐性菌が拡散するリスクを低減できる可能性を示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの検討項目において,いずれも着実に研究が前進し,新たな知見が得られたことが理由である。研究担当者間の連携も取れており,次年度以降も得られた知見を相互に活用し,有機的に研究を展開することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
磁気分離研究においては,畜産廃水とくに乳牛糞尿液分からの抗生物質の磁気分離だけではなく,磁気フィルタからの分離した抗生物質の回収にも注力する。 また、ラボスケールのシークエンスバッチリアクターから単離した細菌の耐性菌出現挙動と多剤耐性化について明らかにした。また、排水処理場からの拡散リスクについて適切な消毒によって低減できる、低減されていることを明らかにした。これらを踏まえて来年度は、微生物群集構造、排水処理性能、抗生物質耐性菌の出現などを引き起こさない最小限の抗生物質濃度が明らかでないため、前処理のガイドライン値は明らかにされていないことから、ガイドライン値の知見を得る実験を展開する。
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