研究課題/領域番号 |
20H03113
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
杉原 創 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30594238)
|
研究分担者 |
國頭 恭 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (90304659)
田中 治夫 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20236615)
李 哲揆 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40770920)
渡邉 哲弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (60456902)
堀川 祥生 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90637711)
宮嵜 英寿 一般財団法人地球・人間環境フォーラム(研究推進ユニット), 研究推進ユニット, 研究官 (30455232)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 熱帯畑作地 / 持続可能性 / 炭素隔離 / 微生物群集 / 有機物分解 |
研究実績の概要 |
半乾燥熱帯で蔓延する貧困と飢餓の解決はSDGsでも取り上げられる喫緊の課題であり、その実現には、生産と保全を両立する土壌有機物管理法の確立が求められる。しかし、有機物分解が速い熱帯畑作地において、土壌へ有機物(炭素)を効率的に隔離する技術は未だ確立されていない。そこで本研究では「分解者である“土壌微生物群集機能の改善”が熱帯での炭素隔離に有効である(=生物的炭素隔離)」という仮説を立て、各種検証を行っている。 課題①:生物的炭素隔離に関する検討 堆肥とバイオ炭の同時施用による微生物群集の変化は炭素隔離を促進するのか?を検討するために、南インドの圃場から持ち帰った土壌、堆肥、バイオ炭資材を用いた短期培養試験を遂行した。次年度以降、得られた試料を対象に、土壌微生物の群集構造の変化と炭素分解量および炭素利用効率との関係性を検討する。また、圃場における堆肥とバイオ炭の同時施用が土壌有機物分解速度を低下させた現象についての研究成果を、現地共同研究者との複数回の議論のもと、投稿論文としてまとめた。更に、現地土壌が有する物理化学的な炭素隔離能を広域で評価した結果、先行研究で報告されている他熱帯地域の炭素隔離能と比して南インドの土壌は極めて低いことが示唆された。 課題②:バイオ炭の物理的施用効果の検証 南インドから持ち帰ったバイオ炭試料を用いて、有機物資材と同時施用した短期培養実験を行い、その吸着効果を検証した結果、バイオ炭への物理吸着に起因する炭素分解抑制効果は低いことが判明した。このことは、バイオ炭と堆肥の同時施用に伴って圃場で観測された土壌有機物の分解抑制機構に、バイオ炭が持つ物理的吸着以外の機構が存在することを示唆している。 課題③:資源の利用可能性 現地における堆肥利用も含めた農地管理の現状把握を行うために、現地共同研究者との議論に基づき作成した現地アンケート調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画1年目であった本年度は、COVID-19の影響で現地調査は全くできなかったものの、先行して持ち帰っていた現地土壌試料およびバイオ炭試料などを用いて、計画していた培養実験を遂行することはできた。またこれまでの人脈をもとに現地共同研究者によるアンケート調査も実施できるなど、必要な作業はほぼ遂行できた。 次年度以降、培養実験で作成した各種試料の分析を進めることで、生物的炭素隔離の遂行に必要な知見を得ることが期待される。加えて、当該土壌を対象に、物理化学的な炭素隔離能を検証した結果、先行研究で報告されている値よりもかなり低い炭素隔離能を当該土壌が有することが示唆されるなど、想定していたのとは異なる面白い成果が得られつつある。以上のように、課題①に加え、課題②③で予定していた作業内容もおおむね計画通りに遂行することができたことから、(2)おおむね順調に進展している、と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
インドにおけるCOVID-19の影響は壊滅的であり、当分現地調査を実施することは困難であると考えられる。そのため、既に持ち帰った現地土壌試料等を活用した室内実験を引き続き行うとともに、得られた研究成果について現地共同研究者と定期的に打ち合わせを実施しながら取りまとめを行い、現地調査の機会を慎重にうかがいたい。 今年度中に、COVID-19による影響が落ち着き、現地調査が実施できる、という前提で研究計画を遂行する一方で、万が一現地調査が実現できない場合には、国内の類似土壌および資材を用いた培養実験の可能性も含めて、共同研究者らと協議を重ねつつ、研究計画を遂行する。
|