研究課題
半乾燥熱帯で蔓延する貧困と飢餓の解決はSDGsでも取り上げられる喫緊の課題であり、その実現には、生産と保全を両立する土壌有機物管理法の確立が求められる。しかし、有機物分解が速い熱帯畑作地において、土壌へ有機物(炭素)を効率的に隔離する技術は未だ確立されていない。そこで本研究課題では「分解者である“土壌微生物群集機能の改善”が熱帯での炭素隔離に有効である(=生物的炭素隔離)」という仮説を立て、各種検証に取り組んだ。なお、当初計画していた新規技術の検証のための現地圃場試験は、COVID-19の問題で実施が困難であったため、現地共同研究者と議論の上、これまでに採取した土壌に加え、類似の生態環境を持つ土壌試料を新たに含めて研究を進めることで、当該研究を発展・深化させることとし、研究に取り組んだ。研究成果概要は以下のとおりである。南インドの熱帯畑作地において、バイオ炭や堆肥等の有機資材の施用が土壌中の炭素循環及び作物生産に与える影響について解明した。この結果、バイオ炭と堆肥の同時施用により土壌微生物の分解活性が抑制され、結果的に炭素隔離が促進することを発見したほか、堆肥利用のみでは低い作物生産を改善することは困難であり、バイオ炭、堆肥、化学肥料の3種を目的に応じて使い分けていく必要があることを示した。また、炭素、窒素、リンに関連する酵素活性および微生物バイオマス量を測定し化学量論的に土壌微生物の機能制限因子を解析した結果、堆肥施用量を増加させることによりリン制限が緩和されることで、土壌微生物群集とその機能が変化・改善し、炭素隔離に貢献しうることを発見した。これらの結果は、生物的炭素隔離を実現するために、施肥などによる養分化学量論的アプローチに基づく管理が有効であることを示す一方、土壌環境毎に炭素隔離能や実現すべき養分化学量論が異なることを示している。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Geoderma
巻: 440 ページ: 116729~116729
10.1016/j.geoderma.2023.116729
Plant and Soil
巻: 482 ページ: 601~625
10.1007/s11104-022-05714-9