研究課題/領域番号 |
20H03118
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
伊藤 通浩 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 助教 (80711473)
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研究分担者 |
小西 照子 琉球大学, 農学部, 教授 (30433098)
田中 厚子 琉球大学, 理学部, 助教 (40509999)
岩崎 公典 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 准教授 (50347134)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オキナワモズク / 微生物叢 / メタゲノム / トランスクリプトーム / 細胞壁多糖 / メタボローム |
研究実績の概要 |
オキナワモズク微生物叢の網羅的解析法の構築を試みた。16S rRNA遺伝子のアンプリコンシーケンシングによる微生物叢解析法をオキナワモズクに適用するにあたり、実際の微生物叢に近いと考えられるショットガンシーケンシングによるオキナワモズク微生物叢データと、高い相関を示すデータを得られるPCR条件を72通りの組み合わせから選抜した。次に、本研究で選抜したPCR条件を用いて、沖縄県内8地点から採取したオキナワモズクとオキナワモズク漁場の微生物叢を解析した。結果として、オキナワモズクとその周辺海水の微生物叢は明確に異なっており、オキナワモズクにはオキナワモズクの微生物叢が形成されていること、および、オキナワモズク微生物叢は産地ごとの特徴があることが判明した。また、沖縄県本部町備瀬の地先のオキナワモズク漁場にモズク微生物叢を時系列で追跡する野外実験を行い、モズクの採取時期によりオキナワモズク微生物叢に大きな差異が見出された。以上のオキナワモズク微生物叢データより、オキナワモズクの全サンプルに見出される1菌種を見出すことができた。 オキナワモズクのトランスクリプトーム解析を行う目的で市販の植物用キットを用いてRNA抽出を行ったところ、収量がきわめて低く、市販キットの標準プロトコルはオキナワモズクに適用できないことが判明した。そこで、独自のステップを追加するなど当該プロトコルを修正し、遺伝子発現解析に適用可能なオキナワモズクからのRNA抽出法を確立した。 オキナワモズクの藻体成分の解析の結果、オキナワモズク細胞壁多糖組成に生長段階ごとの差異が見出された。水溶成分を標的としたメタボローム解析では、脂肪酸が多く検出された一方、有機酸やビタミン類の検出には解析法の修正が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
16S rRNA遺伝子塩基配列を用いたオキナワモズク微生物叢の網羅的解析法を構築することができた。本研究以前には、オキナワモズク微生物叢の解析例は皆無であり、その解析法を構築する必要があったが、本研究の1年目の段階で、オキナワモズク微生物叢のメタ16S解析法を初めて整備することができた。加えて、本手法を沖縄県内の8産地由来のオキナワモズクに適用し、オキナワモズク微生物叢の特徴の概要を明らかにすることができた。この中で、全ての産地に見出される、オキナワモズクと特に密接な関係がある可能性がある菌種を見出した点は、研究開始当初の想定を上回る成果であった。 オキナワモズクのトランスクリプトーム解析にあたっては、十分な量と質のRNAが抽出できることが必須であるが、市販キットの標準プロトコルを用いた研究開始当初はRNA抽出が難航した。そこで、本研究においてオキナワモズクからのRNA抽出法の改良に着手し、本研究1年目の時点で、改良プロトコルを確立するに至った。実際のトランスクリプトームのデータ解析にはまだ至っていないものの、解析可能なオキナワモズクRNAの抽出を積み重ねることができた。 一方で、オキナワモズクの成長が当初の想定より遅れ、最終的な収穫時期が養殖開始の翌年度までかかっている。これに伴って野外試料の採取、試料分析およびデータ解析にやや遅れが出ているが、研究手法の整備が進んでおり、一部で想定を上回る成果も出ていることから、全体としては課題達成に向けて順調に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
① 野外実験において採取した時系列のサンプルにおいて、オキナワモズクの微生物叢解析、トランスクリプトーム解析および藻体成分の解析を進める。今後は、特にオキナワモズクとオキナワモズク微生物叢の相互作用に焦点を当て、取得した個別データ群を照らし合わせた統合的な解析に着手する。 ② オキナワモズク幼体を用いて、実験室内における微生物叢の制御および感染実験を行う。本実験においても微生物叢、トランスクリプトーム等の個別データを取得し、個別データ群を照らし合わせた統合的な解析を行う。
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