研究課題/領域番号 |
20H03120
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
藤井 一至 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60594265)
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研究分担者 |
早川 智恵 宇都宮大学, 農学部, 助教 (10725526)
小松 健 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60451837)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土壌微生物 / 土壌病害 / 土壌酸性化 / フザリウム / バナナ |
研究実績の概要 |
バナナ農園へのマメ科樹木の植栽(アグロフォレストリー)は土壌酸性化を招くリスクがある一方で、バナナに必要なケイ酸供給によって病害抵抗性を高める効果、土壌有機物量の回復、病原菌と拮抗する微生物群集の多様性向上によって病害リスクを低減できる効果が期待できる。本年度は、①東ジャワ州ルマジャン試験地(火山灰土壌)、東カリマンタン州ブキットスハルト試験地(非火山灰土壌)のバナナ農園、バナナ・アグロフォレストリー農園を事例にアグロフォレストリーの土壌の可給態ケイ素濃度、バナナの根、葉のケイ酸濃度への影響を調査し、②土壌酸性度がバナナのケイ酸吸収に及ぼす影響をバナナ苗を用いた温室ポット試験によって検証するとともに、③土壌中の微生物群集に関して、アグロフォレストリーによる微生物群集組成、特に病害菌(フザリウム)の存在量に対する影響を調査した。この結果、アグロフォレストリーによってバナナ葉試料のケイ酸濃度が上昇することが分かった。ただし、東ジャワ州の火山灰土壌で東カリマンタン州の非火山灰土壌よりも土壌の可給態ケイ素濃度、バナナ葉試料のケイ酸濃度いずれも高く、比較的高いpH条件、火山灰土壌の非晶質鉱物によってケイ素の供給力が高まることを解明した。また、ポット試験でも土壌酸性化によってケイ酸の吸収が低下することが支持された。また、マメ科樹木を植栽したバナナ農園では、潜在的な病原菌を含むフザリウム菌の比率がモノカルチャーのバナナ農園よりも低下することを解明した。アグロフォレストリーは土壌炭素量の増加によって微生物群集の多様性を高め、フザリウム菌の比率を低下させる一方で、過度な土壌酸性化はバナナのケイ酸吸収を抑制することを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データを順調に取得するとともに、研究成果は日本土壌肥料学会において発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに①アグロフォレストリーによって土壌有機物量、微生物の多様性が増加し、病原菌を抑制できること、②アグロフォレストリーによって火山灰土壌ではバナナのケイ酸吸収が促進されること、③ただし、非火山灰土壌ではマメ科樹木の植栽による硝酸化成によって土壌酸性化が進み、バナナのケイ酸吸収が低下することを解明している。得られたデータに基づいて、インドネシアの西ジャワ州、東カリマンタン州のバナナ農園それぞれについてアグロフォレストリーによって土壌酸性化とバナナ病害リスクを低減できる最適なシステム(植栽密度・年数、土壌条件)を構築する。
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