研究課題
本年度は、ウシ母体の精子と受精卵センシングによる免疫応答システムのキーとなる現象を活性化して、受胎成立に必要な母体免疫寛容を促進するアプローチを示すことを目的とした。(1)子宮の精子センシングと自然免疫反応:R2年度に発見したウシ精子TLR2の精子機能と子宮上皮との免疫クロストークへの関与について検証した。精子TLR2を活性化すると、精子運動性が受精能獲得に必要な超活性化型に変化して、受精時に卵子侵入が促進されたことと類似して、子宮腺への侵入が促進された。以上から精子TLR2は精子による子宮内炎症反応調節に関わることが示唆された。(2)受精卵のTLR2活性化と発生能: ウシ体外受精系を活用して、精子TLR2活性化によって、受精する精子の卵子透明帯への侵入が促進され、受精率と胚盤胞への発生率が増加した。本現象が、精子が透明帯侵入の際に完遂する先体反応促進と直接関係することを見出した。以上から、精子TLR2活性化は生体内での精子受精能獲得に寄与していることが示唆された。加えて、受精卵もTLR2を有し、その活性化によって発生能が向上した。今後、アポトーシスの発生度合や発生速度、受精卵移植後の妊娠に関わるとされる指標遺伝子群について解析する必要がある。(3)子宮の初期胚センシングによる母体免疫寛容誘導:これまでに、初期胚が分泌した微量のIFNTが好中球を刺激して、迅速に免疫細胞同士のコミュニケーションによりシグナルを増幅できる機能を持つこと、受精7日後の子宮内の初期胚は、子宮液のタンパク動態とmiRNA分布を大きく変化させることを明らかにした。R4年度は、ウシ子宮内に超微量IFNTを投与して、受精卵が存在しない状況でIFNTが子宮上皮のApolipoprotein-A1分泌を刺激し、このタンパクが子宮免疫環境を強く抗炎症性に誘導する因子の1つであることが証明された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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