研究課題/領域番号 |
20H03128
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村井 篤嗣 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10313975)
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研究分担者 |
水島 秀成 北海道大学, 理学研究院, 助教 (20515382)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 畜産学 / 栄養生理学 / 鳥類 / 卵 / 抗体 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
・PLA2RのIgY受容体機能を解析するために、この受容体を高レベルに強制発現させたMDCK細胞株(イヌ腎臓尿細管上皮細胞株)の樹立を目指した。外来遺伝子の導入効率が高いエレクトロポレーション法を採用したことで、最終的にPLA2Rを子レベルで発現する細胞株を樹立することができた。PLA2Rを発現していない対照となるMOCK細胞株の樹立にも成功した。 ・これら2つの細胞株ををトランスウェルシステム上で培養し、培養液に添加したIgYの細胞内輸送量を調査した。しかしながら、トランスウェルを通過するIgYの輸送量は添加したIgYの0.05%以下にとどまり、PLA2Rの発現量にかかわらず、細胞を透過するIgY量を測定するのは困難であることが判明した。 ・卵黄へのIgY輸送能が異なるIgY変異体を培養液に添加して、PLA2Rを強制発現させた細胞株への取り込み量を測定した。対照となるMOCK細胞株に比べて、PLA2Rを強制発現させた細胞株では全てのIgY変異体の取り込み量が高くなった。そして、予想に反して卵黄への輸送能が最も低いIgY変異体(Y363A)の取り込み量が最も高くなった。以上より、PLA2Rは細胞内へのIgYの取り込みを増加させる能力を有すること、卵黄へのIgY輸送能が低いIgY変異体は逆にPLA2Rとの結合が強いために輸送量が減少する可能性が示唆された。 ・CRISPR-Cas9システムによるPLA2R欠損ウズラの作出を進めた。DF1細胞(ニワトリ繊維芽細胞株)に候補ガイドRNAの発現ベクターを導入し、single strand annealing アッセイ法を利用してPLA2R遺伝子の切断効率が最も高いガイドRNAを選抜した。このガイドRNAをウズラの受精卵に導入し、生体内でもPLA2R遺伝子の切断が起こることを検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年に作出したPLA2Rの強制発現細胞株は、PLA2Rの発現レベルが低いことが判明し、令和2年12月から遺伝子発現ベクターの導入条件を見直して、令和3年の1月から再度PLA2R高発現株のスクリーニングを実施した。そのため令和2年度の経費を令和3年度に繰り越して本研究課題を実施した。最終的に、令和2年度当初の実施計画を完遂することができた。よって、現在までに本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
PLA2Rを高レベルに発現する細胞株を樹立することができた。この発現細胞株を用いたIgY変異体の取り込み試験によって、PLA2RがIgYの細胞内への取り込みを促進する可能性が示された。一方、取り込み能が最も高くなったIgY変異体は、卵黄へほとんど輸送されない変異体であった。今後は、PLA2RとIgY変異体との分子間相互作用を検証することで、PLA2RによるIgYの輸送機構を明らかにしていく。PLA2Rの欠損ウズラの作出は順調に進んでおり、次年度はウズラの受精卵へCRISPR-Cas9を導入して、PLA2Rを欠損する第1親世代を得る。
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