研究課題
・鳥類の卵黄には感染防御能を持つIgY抗体が蓄積しており、次世代ヒナの免疫能の強化に必須である。我々は、鳥類のみで抗体受容体としてはたらく「ホスホリパーゼA2受容体(=PLA2R)」が卵黄へのIgY輸送量を制御する受容体であるとの仮説を立てて、これを立証しようとした。・PLA2RとIgYとの結合動態を解析するために、バイオレイヤー干渉法を用いた解析を行った。IgYの365番目のグリシン残基をアラニン残基に置換したG365A変異体は、通常のIgYよりも約2倍量高く卵黄へ輸送された。この変異体とPLA2Rとの結合親和性を解析した。その結果、G365A変異体はPLA2Rへの結合速度が約2.2倍、解離速度が約1.3倍高くなり、結合親和性が通常のIgYよりも高くなることが判明した。一方、卵黄にほとんど輸送されない363番目のチロシン残基をアラニンに置換したY363A変異体では、通常のIgYよりもPLA2Rへの結合親和性が著しく高くなり、解離速度も遅延した。よって、Y363A変異体は一旦PLA2Rと結合すると解離がしづらいため、卵黄へ輸送されにくいことが判明した。・PLA2R欠損ウズラを作出するために、ウズラの受精卵にガイドRNAを発現するベクターを導入し、ゲノム編集が生じた個体をスクリーニングした。その結果、発生したウズラの中にPLA2R遺伝子の途中でゲノムDNAが切断されて遺伝子編集が生じた個体を確認した。一方で、このウズラには別の箇所でもゲノム編集が生じるオフターゲット効果が観察されたことから、目的とするゲノム編集ウズラの作出には至らなかった。・以上から、PLA2Rが卵黄へのIgY輸送を担う受容体であることを支持する研究成果を得たものの、PLA2R欠損ウズラの作出は今後の課題として残された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Front. Immunol.
巻: 15 ページ: 1305587
10.3389/fimmu.2024.1305587
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/03/post-635.html