研究課題/領域番号 |
20H03133
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
草間 和哉 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30579149)
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研究分担者 |
堀 正敏 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70211547)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 胎盤 / トロホブラスト / 着床 / 内在性レトロウイルス / ウシ / 細胞融合 |
研究実績の概要 |
本研究は、ウシ特異的内在性レトロウイルス因子(ERVs)発現を中心に、ウシトロホブラスト細胞融合の分子メカニズム、胚着床によるゲノムの状態変化、子宮内環境の細胞融合への影響、ウシ2核、3核融合トロホブラスト細胞の役割について解析することで、子宮内で起こるトロホブラスト細胞の融合機構から胎盤形成・妊娠維持のメカニズムを明らかにするを目的としている。トロホブラスト細胞におけるウシERVs発現調節機構を明らかにするため、ウシトロホブラスト細胞における遺伝子発現変化をRNA-seqを用いて網羅的に解析した。 また、RNA-seqより得た結果から、ERVsを誘導する転写因子を同定し、ゲノムへの結合、ヒストン修飾が変化することを明らかにした。 さらに同定した転写因子 から、細胞内シグナル伝達経路を薬理学的手法を用いて探索してたところ、融合に必須なERVs発現に関わる細胞内シグナルとしてAKTおよびP38MAPKを同定した。さらに、申請者は 着床前後のウシ胎盤・子宮組織にて2種の内在性レトロウイルス因子(ERVs)が着床を境に2核のトロホブラスト細胞に発現することをウシ組織切片を用いたin situ hybridizationにて確認している。着床後の組織から単離したトロホブラスト細胞を用いて、薬理的にヒストン修飾を変化させたところ、ERVs遺伝子発現が促進した。これらの遺伝子発現が生体内でも起きているかをウシ胚のRNA-seqを行い過去の網羅的データとの比較解析を行ったところ、in vitroのデータと一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウシ内在性レトロウイルスの発現制御メカニズムの解明において、細胞レベルではある程度の絞り込みができており、それらの検証実験もほぼ終了している。また、組織サンプルを用いた大規模解析との比較により、生体内でも同様の因子が働いていることを確認しており、他の変化している因子群について、さらに解析している。これはおおむね計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
着床後トロホブラスト細胞においてERVs周辺のゲノム修飾(メチル化)が変化していることを明らかにしており、着床前後期におけるウシ胚の遺伝子修飾(DNAメチ ル化、 ヒストン修飾、RNA修飾)を網羅的に解析していく。これらの大規模データを組み合わせることでより詳細なメカニズムを明らかにする。さらに、他にも発現が変化しているERVs因子群をいくつか同定しており、それらの因子についても融合などの細胞の表現系に変化を与えるか調べる。
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