研究課題/領域番号 |
20H03134
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松本 和也 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (20298938)
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研究分担者 |
根本 充貴 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (10451808)
松橋 珠子 近畿大学, 先端技術総合研究所, 講師 (60504355)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肉用牛 / バイオマーカータンパク質 / プロテオミクス解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、我々は肉用牛の肥育期間中に経時的に採取した血清を対象とした質量分析機を用いた定量プロテオミクスSWATH-MS(Sequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra mass spectrometry)解析情報に基づき世界に先駆けて実施している「血清中バイオマーカータンパク質の動態と種類に関する情報から肉用牛の肥育状態を肥育期間中に生体評価するシステム」開発研究を積み上げている。そして、畜産学と情報科学との異分野融合研究によって、肉用牛の産肉形質を生体評価するシステムの開発と、その結果得られる血清バイオマーカータンパク質の情報に基づく産肉制御の分子機構の統合的理解を目的とするものである。さらに、研究の成果は、これまでその詳細が不明であった肥育期間中の肉用牛における産肉形質の発育に関与する分子機構の解明に資する新しい知見の獲得が期待される。さらに、本研究成果の生体評価システムが肉用牛の生産現場に実装された場合、農家が持つ経験値に依存した農業経営から科学的根拠に基づく農業経営への転換の基盤構築に貢献する。 初年度の成果として、日本の地域性の異なる3地域と全国レベルの肉用牛を扱っている研究機関の協力を得て、供試されたと出荷時の肉用牛(黒毛和種去勢)の枝肉成績の情報と肥育期間中のウシ血清サンプルに基づいた肉用牛の産肉形質の発育状態や肥育状態を生体評価するシステムの開発と、その結果得られる血清バイオマーカータンパク質の情報を基盤とした産肉制御の分子機構の統合的理解を目指す基盤構築が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)黒毛和種肥育牛(去勢)の産肉形質を生体評価する予測モデルの構築:(1)肥育期間中の経時的な血清タンパク質情報の獲得:肉用牛の生後9ヶ月から28ヶ月齢の間で採材した血清サンプルを供試して、血清タンパク質135種類の多項目同時定量解析を行ない、定量情報と経時的な動態情報を延べ頭数427頭で獲得した。(2)特徴量の作成:肉用牛の産肉形質等(枝肉重量・ロース芯面積・バラの厚さ・皮下脂肪の厚さ・歩留基準値・脂肪交雑・脂肪組織のオレイン酸含有率)を目的変数として、個体のゲノム育種価・個体の肥育期間中の血清タンパク質の定量データ及び動態の特徴量を作成した。(3)予測モデルの構築:作成した特徴量を入力データとして予測値を出力する予測モデルとして、線形回帰タスクや非線形回帰タスク(Support Vector Regression)を行った。 2)肥育期間中の産肉形質の発育シミュレーションモデルの構築:(1)血清バイオマーカータンパク質の生理学的機能解析:上記1)で構築された生体評価予測モデルで予測精度の高いモデル中の説明変数は、肥育期間中の特定時期における血清バイオマーカータンパク質となる。同定された血清バイオマーカータンパク質の生理学的機能を、IPA解析を用いたバイオインフォマティクス解析でシミュレーションした。(2)発育シミュレーションモデルの構築: 条件設定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、日本の複数の地域から供試されたと出荷時の肉用牛(黒毛和種去勢)の枝肉成績の情報と肥育期間中のウシ血清サンプルに基づいて、肥育期間中に定量した血清バイオマーカータンパク質135種類の情報を「肉用牛産肉形質の生体評価用ビッグデータ」に搭載し、生体評価用の予測モデルの発見を進めている。今後は、各地域の肉用牛及びより普遍化して全国の肉用牛を対象にした生体評価の予測アルゴリズムの開発を実施する。これによって、肥育期間中の肉用牛における産肉形質の発育に関与する分子機構の解明に資する新しい知見の獲得が期待される
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