研究課題/領域番号 |
20H03136
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
好井 健太朗 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 教授 (50421988)
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研究分担者 |
小林 進太郎 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (00634205)
五十嵐 学 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (10374240)
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40396304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フラビウイルス / 血液脳関門 / 人獣共通感染症 / 組換え抗体 |
研究実績の概要 |
ダニ媒介性脳炎、日本脳炎、狂犬病など神経向性の人獣共通感染症ウイルスは、脳に侵入・増殖することで重篤な神経症状を引き起こし、致死率も高い。しかし血液脳関門:BBBの存在のため、抗ウイルス分子をウイルスの増殖する脳に到達させる手法が無く、治療法が未開発であった。BBBにはトランスサイトーシスと呼ばれる物質を血流から脳内へと輸送する機構があり、近年の研究により、このBBB透過に関わる分子の機構が明らかになってきている。本研究では、このBBB透過機構に着目し、組換え抗体等の抗ウイルス分子技術と融合させることで、BBBを透過する機能を利用した抗ウイルス分子の脳内導入法を構築し、神経向性ウイルス感染に対する治療応用を試みる。 本年度における研究では、BBB透過型の抗ウイルス分子の候補分子の検証として、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)に対して増殖抑止効果を示す分子の検討を行った。TBEVに対する中和抗体について、幅広いウイルス株に対して中和効果を示すモノクローナル抗体(MAb)を検証し、その中和メカニズムについての構造学的解析を行った所、ウイルスのエンベロープ膜蛋白のレセプター結合部位、およびエンドソーム膜との融合の際に生じる構造変化に関わる部位に対して結合する事が示された。このMAbを産生するハイブリドーマから抗体の配列解析を行い、その情報を基に、組換え抗体を作製した。作製した組換え抗体は元のMAbと同様の中和活性を示していた。この組換え抗体について、BBBのトランスサイトーシスへの関与が示されている狂犬病ウイルスのG蛋白上のアミノ酸配列を融合させた抗体を作製した。このアミノ酸配列の融合は、抗体の中和活性に影響を与えず、今後BBBの透過性を検証していくうえで有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で、TBEVに対する中和抗体の検証を行うにあたって、チェコの海外協力研究者との技術及び試料供与を受けつつ進める予定であったが、新型コロナウイルスの影響のためにこれらの共同研究の遅延が生じたため、当初予定していた抗体を使用した研究の実施に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、今回検討したBBB透過性を持つ配列を付加した組換え抗体について、BBBの透過性を検証するとともに、ウイルス感染マウス病態モデルを用いての治療効果の検証を進めていく。また、siRNA等の他の抗ウイルス分子について、同様のBBB透過型の治療分子としての応用が可能かという点についても検証を進めていく予定である。
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