研究課題/領域番号 |
20H03137
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大橋 和彦 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (90250498)
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研究分担者 |
村田 史郎 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (10579163)
今内 覚 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (40396304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワクモ |
研究実績の概要 |
ワクモやトリサシダニは、鳥類の代表的な外部寄生虫であり、鶏に貧血や削痩、産卵率低下など養鶏産業に大きな経済的被害をもたらしている。現在、その防除には主に駆虫剤が使用されているが、薬剤耐性個体の出現や駆虫剤残存による衛生環境の悪化などが問題となっており、抗ダニワクチンなど新規防除法の開発が必要となっている。そこで本研究では、ワクモとトリサシダニ及び近縁なミナミトリサシダニを同時に防除できるダニ種横断的な新規“ユニバーサル”ワクチンの開発を目指して、次世代シークエンサーを用いたRNA-SEQ解析や全ゲノム解析と相同性検索により、これらのダニ間で共通の非暴露型抗原の探索・同定を行い、吸血したダニ個体に致死的に作用して鶏舎内の寄生虫個体数を持続的に減少できるワクチンへの応用を検討することを目的とした。 今年度は、最初にワクモにおいて、飢餓および吸血後のワクモより試料を調製して次世代シークエンサーを用いたRNA-SEQを行い、発現する遺伝子群の網羅的解析を行った。その結果、吸血後のワクモでは、細胞内の代謝やエネルギー合成に関わる遺伝子群の発現が上昇し、飢餓ワクモでは、脂肪酸酸化や糖質合成など関わる遺伝子群の発現が顕著であった。 新規“ユニバーサル”ワクチン候補分子を同定する際には、候補分子の発育ステージ毎あるいは組織別での詳細な発現解析を行う必要があるが、ワクモなどでは相対的発現量に計測に必須のreference遺伝子の情報が乏しい。そこで適当な2つのreference遺伝子を同定して、定量的real-time PCR法を樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シークエンサーを用いたRNA-SEQを行い、飢餓および吸血後のワクモにおいて発現する遺伝子群の網羅的解析を行い、新規“ユニバーサル”ワクチン候補分子を多く同定でき、また今後の詳細な発現解析に向けた定量的real-time PCR法を樹立できたので、研究計画は概ね順調に進行していると判断した。しかしミャンマーで追加取得予定であったミナミトリサシダニ試料の調製ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に同定した新規“ユニバーサル”ワクチン候補分子について、さらに詳細な発現解析を行った後、トリサシダニやミナミトリサシダニでの相同分子の探索を行い、“ユニバーサル”ワクチンの候補分子の同定を試みる。さらに同定した分子に関しては組換え体を調製して、その抗ワクモ効果を検討する。発現解析には前年度樹立したreference遺伝子を用いた定量的real-time PCR法を用いる。またトリサシダニやミナミトリサシダニでの相同分子の探索のための試料調製のため、国内でのトリサシダニ材料の取得をより地域を拡大して実施する。またミナミトリサシダニの試料はミャンマーで追加して取得予定であるが、現在渡航が未定であるため、今年度はワクモとトリサシダニの比較を重点的に実施する。
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