研究課題/領域番号 |
20H03139
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
滝口 満喜 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (70261336)
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研究分担者 |
村上 正晃 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (00250514)
山崎 淳平 北海道大学, 獣医学研究院, 特任准教授 (20732902)
池中 良徳 北海道大学, 獣医学研究院, 教授 (40543509)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 副腎肝臓連関 / 網羅的ステロイドホルモン測定 / エピゲノム変異 / 副腎皮質機能亢進症 |
研究実績の概要 |
犬の肝細胞癌における、ステロイドホルモン産生過剰を起点とする発がん仮説の検証を目指し、前年度に引き続いた検討を行った。2年目となる本年度は肝細胞癌・副腎皮質機能亢進症罹患犬における血中ステロイドホルモン・代謝産物のプロファイリング、ならびに肝臓組織でのエピゲノム変異の解析を遂行した。 ステロイドプロファイリングでは前年度に確立した測定系を発展拡大させ、新たに6種の副腎皮質ホルモンと4種の代謝産物を合わせた、合計19種類のステロイドプロファイル解析が可能となった。この新たな測定系を用いて、肝細胞癌36症例、副腎皮質機能亢進症15症例、併発11症例、コントロール19症例を対象として、血液中のステロイドプロファイルを解析した。しかし、血液中のステロイドプロファイルに疾患特異性、もしくは疾患群間での差が認められなかった。 DNAメチル化の解析では、実験的ステロイドホルモン誘発性脂肪肝、副腎皮質腫機能亢進症併発肝細胞癌および肝細胞癌単独症例の腫瘍組織と腫瘍近傍組織の、合計3種類の肝臓組織を用い、多段階発癌仮説の検証を試みた。その結果、脂肪肝・近傍組織・腫瘍組織と段階的なメチル化変化が存在し、腫瘍においてメチル化レベルの高い遺伝子が6、低い遺伝子が12、抽出できた。 現時点では血中ステロイドプロファイルに肝細胞癌と副腎皮質機能亢進症との関連を示唆する血中ステロイドプロファイリングは見つかっていない。一方で、ステロイド肝から腫瘍への段階的なDNAメチル化レベルの変化が存在することが明らかになった。犬の肝細胞癌においてステロイドが発症に役割を果たしていることは十分に予想され、本年度の成果を複合的かつ詳細に解析することで、多段階発がん説の検証が進む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19種類のステロイドホルモンの測定が可能となり、ステロイドプロファイルの解析が進展した。また、腫瘍組織・腫瘍近傍組織を対象とすることで、段階的DNAメチル化レベルの変化が明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に研究分担者池中らと確立した副腎皮質ステロイドホルモン、および主要な副腎皮質ステロイドホルモンの肝臓代謝産物の測定をさらに進め、症例数の増加を図る。ステロイドホルモン・代謝産物を合わせたプロファイルを解析し、肝細胞癌、副腎皮質機能亢進症、副腎皮質機能亢進症併発型肝細胞癌の各疾患に特異的なパターンが存在するか解析する。 DNAメチル化解析では、すでに肝細胞癌組織ー同一症例の非主要組織のペア組織によるDNAメチル化の比較が終わっている。本年度は、解析対象にステロイドホルモン・代謝産物プロファイルに供した血清のペア肝臓組織を用いる。エピゲノム解析においては、非免疫細胞(肝細胞)による炎症回路と疾患の関連性を明らかにするため、IL-6を中心とする炎症ループ関連遺伝子の詳細な解析を行う。また、副腎皮質機能亢進症において特徴的な肝臓病理組織所見である肝細胞の空胞変性、ステロイド誘発性アルカリホスファターゼ値にも着目しながら副腎皮質機能亢進症併発症例の比較を行う。以上の血液中ステロイドホルモン・代謝産物、および組織でのエピゲノム変異のデーターを複合的に解析することで、副腎皮質機能亢進症と肝細胞癌の関連性の解明を目指す。
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備考 |
本研究により開発したステロイドホルモン測定系を外部機関へ提供している。
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