研究課題/領域番号 |
20H03142
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
猪熊 壽 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70263803)
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研究分担者 |
芳賀 猛 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (20315360)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 牛伝染性リンパ腫 / クローナリティー解析 / リンパ球増多症 / 発症マーカー / ウイルス発がん |
研究実績の概要 |
1.研究チーム:2021年11月に東京大学農学生命科学研究科に寄付講座・OSG国際防疫獣医学が新設され、同年12月より特任助教2名が研究協力者として研究チームに新たに加わった。 2.BLVの牛ゲノムへの組込部位に基づくクローナリティー解析法であるインバースPCRの牛伝染性リンパ腫の診断的価値を評価した。感度、特異性、陽性予測値および陰性予測は、それぞれ、86.6%、100%、100%および86.4%であり、本法が牛伝染性リンパ腫の確定診断に有効であることが示された(Maezawa, Com Clin Pathol, 2021)。 3.新規Bリンパ球クローナリティー解析法として免疫グロブリンのL鎖の遺伝子再構成に関する遺伝子情報からプライマーセットを設計し、その感度と特異性を確認した。感度は高いが特異性の面で改善すべき点が多いことが明らかとなった。 4.BLV感染しリンパ球増多症を呈する牛の末梢血Bリンパ球クローナリティーを解析したところ、14.0 %の個体がクローナリティー異常を呈していることが示唆された。これらの牛は異常のない個体と比較すると、1年後に有意に高い割合でリンパ腫を発症した。本法が発症リスク予測に応用できる可能性が示された(Takezawa, J Vet Med Sci, 2021)。 5.牛伝染性リンパ腫の発症を疑う症例において、末梢血リンパ球クローナリティー解析が診断上有用であること、および異常リンパ球出現の有無を検出する方法として有用であることを示した(猪熊, 家畜診療, 2022)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.研究チーム:2021年11月に東京大学農学生命科学研究科に寄付講座・OSG国際防疫獣医学が新設され、同年12月より特任助教2名が研究協力者として研究チームに新たに加わった。 2.BLVの牛ゲノムへの組込部位に基づくクローナリティー解析法であるインバースPCRの牛伝染性リンパ腫の診断的価値を評価した。感度、特異性、陽性予測値および陰性予測は、それぞれ、86.6%、100%、100%および86.4%であり、本法が牛伝染性リンパ腫の確定診断に有効であることが示された(Maezawa, Com Clin Pathol, 2021)。 3.新規Bリンパ球クローナリティー解析法として免疫グロブリンのL鎖の遺伝子再構成に関する遺伝子情報からプライマーセットを設計し、その感度と特異性を確認した。感度は高いが特異性の面で改善すべき点が多いことが明らかとなった。 4.BLV感染しリンパ球増多症を呈する牛の末梢血を対象に免疫グロブリンH鎖遺伝子再構成に基づくクローナリテフーを解析したところ、14.0 %の牛が異常を呈していた。これらの牛はクローナリティー異常のない個体と比較して、1年後に有意に高い割合でリンパ腫を発症した。本法が発症リスク予測に応用できる可能性が示された(Takezawa, J Vet Med Sci, 2021)。 5.牛伝染性リンパ腫の発症を疑う症例において、末梢血リンパ球クローナリティー解析が診断上有用であること、および異常リンパ球出現の有無を検出する方法として有用であることを示した(猪熊, 家畜診療, 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2つの目的について、それぞれ以下のような推進方策を計画している。 1.クローナリティー異常の観点からのウイルス性白血病の発症機序解明:BLV感染牛のクローナリティー異常は時間経過により変化することが明らかとなったことから、今後はクローナリティー状態の変化の時期に何が生じているかを明らかにしたい。クローナリティー異常を呈している牛の末梢血クローナリティーを経時的にモニターするとともに、免疫関連遺伝子として、INFγ、IL2等の免疫関連遺伝子の発現状況を解析する。 2.牛リンパ球のクローナリティー解析を利用した牛白血病早期診断法開発:2022年度もこれまでに引き続き、研究協力者とともにリンパ腫症例を蓄積し、クローナリティー解析法を診断に適用する。とくにBリンパ球クローナリティーPCRの感度向上をめざし、新規PCR系としてBリンパ球Igのラムダ鎖、カッパ鎖の遺伝子情報に基づき、新たなクローナリティー解析用のプライマーセットを設計し、既に収集したB細胞リンパ腫症由来ゲノム遺伝子を材料に、その感度と特異性を確認する。また、既存のH鎖再構成に基づくPCR等複数のPCR系を組合わせることによって、感度と特異性を向上させることを目指す。
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