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2021 年度 実績報告書

尿サンプル由来オルガノイドを用いた多角的な研究:イヌ膀胱がん克服にむけて

研究課題

研究課題/領域番号 20H03145
研究機関東京農工大学

研究代表者

臼井 達哉  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任講師 (80727652)

研究分担者 恒富 亮一  山口大学, 医学部附属病院, 講師 (10420514)
打出 毅  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20327456)
大松 勉  東京農工大学, 農学部, 准教授 (60455392)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード犬 / 膀胱がん / オルガノイド / 抗がん剤
研究実績の概要

イヌの膀胱がんは、悪性度が非常に高く有効な治療法が存在しないことから、新規治療法の開発が獣医療の現場において喫緊の課題となっている。本研究では、新規膀胱がん幹細胞関連遺伝子の機能を解析し、新規治療薬の開発につなげる。さらに、イヌ膀胱がんオルガノイドを用いた新たな培養細胞の創出および臨床検査システムの開発を行うとともに、膀胱がん罹患犬の尿中細菌叢解析によって、オルガノイドの増殖・生存を制御する細菌種を同定し、新たな治療標的とする。今年度は、2.5Dオルガノイド培養法を様々な犬猫の上皮系腫瘍の初代培養法に応用可能かを検討し、イヌ乳腺がん、ネコ乳腺がん、イヌメラノーマ、イヌ肺腺癌などの細胞の接着性や増殖率の向上に寄与することを明らかにした(Biomedicine &Pharmacotherapyに投稿中)。また、膀胱癌罹患犬32頭からオルガノイドを作製し、抗がん剤感受性試験を実施した後に、治療効果との相関を解析した。その結果オルガノイドを用いた抗癌剤感受性試験が臨床的に有用であることを証明するデータを纏め日本獣医腎泌尿器学雑誌に受理された。さらに、新規分子標的薬トラメチニブによる膀胱癌オルガノイドの抑制メカニズムを明らかにし、国際共著論文として成果を纏めることができた。尿中の細菌叢解析では、正常犬5頭、膀胱がん罹患犬16頭の尿中細菌のDNAを収集し、次世代シークエンサーを用いた解析を行い、各群における尿中細菌叢の比較を行った。さらに、健常犬の膀胱粘膜をカテーテルで掻把することで非侵襲的な正常膀胱オルガノイド培養法を確立し、日本内科学アカデミー学術集会において研究アワードを受賞した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は主に下記の項目の実験に進捗がみられた。
①尿サンプル由来イヌ膀胱がん2.5Dオルガノイド培養法の確立と有効性の証明: 2.5Dオルガノイド培養法を様々な犬猫の上皮系腫瘍の初代培養法に応用可能かを検討し、イヌ乳腺がん、ネコ乳腺がん、イヌメラノーマ、イヌ肺腺癌などの細胞の接着性や増殖率の向上に寄与することを明らかにした(Biomedicine & Pharmacotherapy submitting)。
②健常犬由来膀胱オルガノイド培養法の確立と有効性の検証: 健常犬5頭から尿道カテーテルを用いて膀胱粘膜を軽度に掻爬し、膀胱粘膜細胞を採取し、その細胞成分からオルガノイドの作成を試みた。全頭から正常膀胱オルガノイドが作製され、球状の形態を示していた。またそのオルガノイドは尿路上皮の層構造や尿路上皮マーカーの発現が確認され、生体内の膀胱粘膜と類似する構造を示した。また、オルガノイドの系統ごとに異なる抗がん剤の感受性を呈しており、膀胱癌罹患犬由来のオルガノイドは健常犬由来のものと比較して核分裂数や培養液成分への依存度、がん関連遺伝子シグナルの活性が認められた(Biomedicine & Pharmacotherapy submitting)。
③オルガノイドを用いた臨床検査法の開発: 膀胱癌罹患犬32頭からオルガノイドを作製し、抗がん剤感受性試験を実施した後に、治療効果との相関を解析した。その結果オルガノイドを用いた抗癌剤感受性試験が臨床的に有用であることを証明するデータを纏め日本獣医腎泌尿器学雑誌に受理された。
④尿中細菌叢による膀胱がん幹細胞制御機構の解明: 正常犬5頭、膀胱がん罹患犬16頭の尿中細菌のDNAを収集し、次世代シークエンサーを用いた解析を行い、各群における尿中細菌叢の比較を進めている。

今後の研究の推進方策

①尿サンプル由来イヌ膀胱がん2.5Dオルガノイド培養法の確立と有効性の証明: 上皮系に加えてリンパ腫などの血球系のがん種での抗がん剤感受性試験や腫瘍形成能の評価アッセイへの応用を検討していくとともに、2.5Dオルガノイドと各患畜由来3Dオルガノイド、細胞株の性質の違いを詳細に解析する。
②オルガノイドを用いた臨床検査法の開発; 膀胱炎による過形成症例や、正常膀胱オルガノイドとの病理学的構造および遺伝子発現パターンの比較解析を進めるとともに、膀胱癌オルガノイドで抗がん剤抵抗性を示す個体に対する新規治療薬の検討を行っていく。
③尿中細菌叢による膀胱がん幹細胞制御機構の解明; 良性膀胱疾患犬および膀胱がん罹患犬からさらに尿サンプルを収集した後に次世代シークエンサーを用いた解析を行い、各群における尿中細菌叢の比較や、膀胱癌特異的に増加する細菌を同定し、がん幹細胞増殖や腫瘍進展への影響を検討する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 尿サンプル由来イヌ移行上皮癌オルガノイド培養法を用いた 抗がん剤感受性検査の開発2022

    • 著者名/発表者名
      佐藤よもぎ、Mohamed Elbadawy、山本晴、森正弘、森崇、中川貴之、前田真吾、野口俊助、岩井聡美、呰上大吾、打出毅、福島隆治、篠原佑太、臼井達哉、佐々木一昭
    • 雑誌名

      日本獣医腎泌尿器学雑誌

      巻: 14 ページ: -

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Anti-tumor effect of trametinib in bladder cancer organoid and the underlying mechanism2021

    • 著者名/発表者名
      Mohamed Elbadawy, Yomogi Sato, Takashi Mori, Yuta Goto, Kimika Hayashi, 1Megumi Yamanaka, 5 Daigo Azakami, Tsuyoshi Uchide, Ryuji Fukushima, Toshinori Yoshida, Makoto Shibutani, Mio Kobayashi, Yuta Shinohara, Amira Abugomaa, Masahiro Kaneda, Hideyuki Yamawaki, Tatsuya Usui, Kazuaki Sasaki
    • 雑誌名

      Cancer Biology & therapy

      巻: 22 ページ: 357-371

    • DOI

      10.1080/15384047.2021.1919004.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] イヌ正常膀胱オルガノイド培養モデルの確立2022

    • 著者名/発表者名
      山本晴、藤坂航大、モハメドエルバダウィー、石原勇介、呰上大吾、打出毅、福島隆二、森崇、臼井達哉、佐々木一昭
    • 学会等名
      第17回日本獣医内科学アカデミー学術集会
  • [学会発表] 三次元オルガノイド培養法を用いたオーダーメイド獣医療の開発と創薬への応用2021

    • 著者名/発表者名
      臼井達哉
    • 学会等名
      医薬品毒性機序研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 3次元オルガノイド培養法を用いたイヌ正常膀胱のin vitroでの再現および解析2021

    • 著者名/発表者名
      藤坂航大,モハメドエルバダウィー, 山本晴, 石原勇介,,臼井達哉 佐々木一昭
    • 学会等名
      第44回日本分子生物学会年会
  • [図書] 細胞外マトリックス実験法2021

    • 著者名/発表者名
      新井 克彦 編著  服部 俊治 編著
    • 総ページ数
      454
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4-621-30685-7

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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