イヌ皮膚リンパ腫の転移におけるCCR4およびCCR7の役割を明らかにし、これらの分子を標的とした治療法の開発を目的として以下の実験を行った。犬においては、CCR7タンパク発現解析法が確立していない。そのため、CCR7タンパク検出法として受容体とリガンドの結合に着目した。イヌCCR7のリガンドであるイヌCCL19の遺伝子を挿入したpCAG-Neo hIgG1-FcをHEK293細胞に導入し、ヒトIgG融合イヌCCL19タンパクを作製した。フローサイトメトリー解析の結果、ヒトIgG融合イヌCCL19タンパクはイヌCCR7トランスフェクタントのみならずイヌ皮膚リンパ腫細胞株(EO-1)に発現するCCR7も認識することがわかった。一方、市販されている抗ヒトまたは抗マウスCCR7抗体の7クローンについて、イヌCCR7トランスフェクタントに対する交差性をフローサイトメトリー、免疫細胞化学およびウエスタンブロッティングによって評価したが、いずれの抗体も交差性を示さなかった。ヒト皮膚リンパ腫の治療に用いられるヒト化CCR4抗体のイヌ末梢血単核球またはCCR4を発現するEO-1に対する交差性をフローサイトメトリーによって評価したが、いずれも交差性は認められなかった。イヌ皮膚リンパ腫細胞株移植マウスモデルにおけるCCR4およびCCR7の役割を評価するために、CRISPR-Cas9を用いたゲノム編集によってEO-1におけるCCR4またはCCR7のノックアウトを試みた。イヌCCR4に対する交差性が証明されている抗ヒトCCR4抗体(1G1)またはヒトIgG融合イヌCCL19タンパクを用いたフローサイトメトリー解析の結果、EO-1におけるCCR4またはCCR7の発現消失が明らかとなった。
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