研究課題/領域番号 |
20H03151
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
大浜 剛 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (50579018)
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研究分担者 |
大松 勉 東京農工大学, 農学部, 准教授 (60455392)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん幹細胞性 |
研究実績の概要 |
近年、がんの再発・転移・治療抵抗性の原因としてがん幹細胞が注目されているが、幹細胞性維持の分子機構が十分に解明されておらず、がん幹細胞を標的とした創薬は実現していない。本研究の目的は、「がん幹細胞性」維持機構への理解を深めることで、創薬実現への足がかりにすることである。具体的には、申請者が報告したがん増悪因子SETがProtein Phosphatase 2A(PP2A)の活性を阻害することにより幹細胞性が維持される分子機構の詳細を解明するとともに、PP2AとSETのタンパク質間結合(PPI)を標的とした化合物の抗がん剤としての適応の可能性を明らかにする。 本年度は、SETタンパク質が蓄積する分子機構を報告することに成功した。すなわち、SETは選択的オートファジーによって分解されており、SET結合タンパク質SETBP1がSETをオートファジー分解から保護することでSETタンパク質が蓄積することを明らかにした。本成果はThe Journal of Biochemistry, 170(1): 131-138に掲載されている。また、SETとPP2Aの結合を阻害する中分子化合物の同定については、スクリーニングから得られたリード化合物について構造最適化に関する解析を行い、本年度は阻害活性が約10倍高い化合物の合成に成功した。さらに、SETががん細胞だけでなく、がん微小環境を構成する細胞の一部でも発現していることを見出し、SET陽性の細胞集団が果たす役割とその分子機構を明らかにして学会発表を行った。現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がんでSETタンパク質が蓄積する分子機構の詳細は明らかになっていなかったが、本年度はこの解明に成功した。すなわち、SETは選択的オートファジーによって分解されており、SET結合タンパク質SETBP1がSETをオートファジー分解から保護している。本成果はThe Journal of Biochemistry, 170(1): 131-138に掲載されている。また、SETとPP2Aの結合を阻害する化合物についても、リード化合物の構造最適化を行い、阻害活性が約10倍高い化合物の同定に成功した。さらに、SETががん細胞だけでなく、がん微小環境を構成する細胞においてもがん促進性の働きをすることを明らかにしており、学会発表を行った。現在論文投稿中である。SETががん幹細胞性を高める分子機構と、SETと相乗効果を示す既存の抗がん剤についても、RNAseq解析の結果から有用な情報も得られ、全体として「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度であり、SETががん幹細胞性を高める分子機構と、SETと相乗効果を示す既存の抗がん剤についての研究のまとめに入る。大枠のデータは取れており、詳細を詰めることで論文投稿まで進む予定である。SETとPP2Aの結合を阻害する化合物については、さらなる阻害活性の向上を図るとともに、特異性の解析を行う。
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