研究課題
研究 1: ブタ初期胚からのエピブラスト幹細胞の樹立とその特性解析妊娠 10 日目前後のブタ子宮から、ブタ胚を回収し、胚から未分化なエピブラストを顕微鏡下で単離後、フィーダー細胞上に播種し、エピブラスト幹細胞を樹立した。樹立された幹細胞株は未分化状態を保ったまま安定して長期培養できることを確認できた。また長期培養後も安定した核型を維持し、特定の条件下では三胚葉それぞれの細胞系譜へ in vitro で分化誘導できた。さらに免疫不全マウスの腎被膜下へ移植することでテラトーマを形成した。このことから多能性幹細胞としての基準を満たしていると考えられる。また共同研究によりエピブラスト幹細胞のトランスクリプトーム解析を行い、すでに報告されているブタ初期胚の単一細胞トランスクリプトーム解析の結果 (Ramos-Ibeas et al.,Nat Commun (2018)) との比較解析から、樹立したエピブラスト幹細胞が胚発生において円盤型のエピブラストに近いプロファイルを示すことが明らかになった。研究 2: PGC 特異的レポーターを持つブタエピブラスト幹細胞の樹立研究 1 で樹立したエピブラスト幹細胞を用いて、ブタ PGC を特異的に可視化・純化するため、種を越えて PGC で高い発現が認められる遺伝子である NANOS3 の 3’末端に T2A-tdTomato をノックインする NANOS3-tdTomato レポーター株の作製を行った。薬剤耐性遺伝子を含むターゲティングベクターと CRISPR/Cas9 システムの導入による効率的な遺伝子相同組み換えが可能となり、目的細胞株が得られた。
2: おおむね順調に進展している
本年度に目的としたブタ初期胚からのエピブラスト幹細胞の樹立とその特性解析、およびPGC 特異的レポーターを持つブタエピブラスト幹細胞の樹立、その2つを順調に進めることができた。特に幹細胞株の樹立では、用いた培養条件下では 80% 以上の効率で、単離したエピブラストを幹細胞株化できることが明らかになり、安定かつ再現性の高い方法として汎用できると期待される。
研究1.NANOS3-tdTomato を指標としたin vitro PGC 分化誘導作製した PGC 特異的に tdTomato を発現する NANOS3-tdTomato ブタエピブラスト幹細胞を用いて、tdTomato の発現を指標にin vitro PGC の分化誘導条件を検討する。効率的に分化誘導できる条件を決定した後、NANOS3-tdTomato 陽性細胞におけるPGC マーカーの発現を免疫染色や定量RT-PCR により確認し、PGC 様の遺伝子発現パターンを示すことを明らかにする。研究2.NANOS3-tdTomato クローン胚の作製NANOS3-tdTomato ブタエピブラスト幹細胞の核をドナーとし、ブタ未受精卵へ体細胞核移植を行い、エピブラスト幹細胞の遺伝子型を持ったクローン胚作製を行う。ドナー細胞核として、細胞周期などの最適な条件を予備実験により検討した後、in vitro で胚盤胞形成率の評価、さらには子宮移植後の胚発生能評価を行う。クローン胚の解析は、顕著な数のPGC が生殖巣で見られる胎生26-30 日目に行い、生殖層におけるNANOS3-tdTomato の発現を蛍光観察する。十分な蛍光が認められる場合は、組織を固定し、NANOS3-tdTomato 陽性細胞がPGC マーカーを発現しているか、免疫染色により確認する。
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Nature communications
巻: 12 ページ: 1328
10.1038/s41467-021-21557-x