本年度は、in vivoでのタンパク質分解効率を検討した。分解ツールを発現するトランスジェニックマウスを作製し、リガンド発現マウスと交配し、次世代でリガンドの発現を観察したところ、分解ツールの発現による分解が認められた。一方、AAVで同様にリガンド発現マウスで分解ツールを発現したところ、トランスジェニックマウス程の分解は認められなかった。分解ツールに蛍光タグを付加して培養細胞で観察したところ、自発的な分解が認められ、過剰に細胞内で発現しなければ標的タンパク質を十分に分解できないことが示唆された。シンドビスウイルスを用いた指向性分子進化系を確立し、分解ツールの分子進化を行ったところ、いくつかのリジン残基への変異が認められたことから、これらの変異体を構築して安定性を比較したが、依然として自発的な分解が認められた。今後、分解ツールの安定化のための手法を考案する必要がある。 高親和性のリガンド結合ドメインを作製するために、前述の通りシンドビスウイルスを利用する指向性分子進化法であるVEGAS法を導入し、リボソームディスプレイと連続したドメイン作製系を構築した。 上記の検討を通じて、トランスジェニックマウスの効率的な作製系について検討した。従来の手法ではマイクロマニピュレーターによる前核注入が必要となるが、汎用化を目指し、エレクトロポレーターを利用したトランスジェニックマウス作製系の構築を試みた。受精卵の処理条件を最適化し、トランスポゾン系を併用することで、受精卵エレクトロポレーションによるトランスジェニックマウスの作製が可能であることが明らかとなった。
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