研究課題/領域番号 |
20H03171
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成瀬 智恵 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30372486)
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研究分担者 |
杉原 一司 京都大学, 医学研究科, 技術職員 (10377418)
浅野 雅秀 京都大学, 医学研究科, 教授 (50251450)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デグロン / PD-1 / マウス / プロテインノックダウン |
研究実績の概要 |
細胞には不要になったタンパク質を破壊したり,発現量を調節したりするためのユビキチンプロテアソーム系タンパク質分解機構が存在する。近年,この分解機構が認識するタンパク質分解配列(デグロンタグ)と小分子化合物を組み合わせて,標的タンパク質を薬剤依存的に分解できる方法であるプロテインノックダウン法が開発され,PROTACなどとして臨床応用されている。しかしながら,目的とする内在性タンパク質に結合する小分子化合物の探索は容易ではない。培養細胞レベルでは,遺伝子改変によって内在性遺伝子にデグロンタグを組み込むことで目的タンパク質の分解が達成されているが,マウス生体内への応用は未だ報告されていない。そこで,本研究では、SMAShデグロンタグを用いて、マウスでPD-1を薬剤投与時にのみ分解できるシステムの確立を試みた。JurkatヒトTリンパ芽球性白血病細胞株,PD-1-mCherry-デグロンタグノックイン(KI)マウスのCD3陽性脾臓細胞,MC-38マウス大腸腺癌細胞株をKIマウスに移植した微小環境を用いて,小分子化合物がPD-1-SMAShデグロンタグ融合タンパク質に及ぼす変化を調べた。また,KIマウスに移植したMC-38細胞の増殖を調べて,マウス生体内におけるデグロンタグの機能を評価した。さらに,KIマウスの詳細な組織学的解析を行った。Jurkat細胞およびマウスCD3陽性脾臓細胞に発現したPD-1-デグロンタグ融合タンパク質は、薬剤の投与により減少した。MC-38大腸腺癌細胞を移植したKIマウスに薬剤を投与したところ、MC-38の増殖は野生型および無処置のKIマウスに比べて抑制された。KIマウスは1年齢まで全てが生存したが、詳細な組織学的解析により軽度の自己免疫疾患が認められた。これは無処置KIマウスにおいてもPD-1の減少があったためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り,2年間でマウス生体内でPD-1をノックダウンし,MC-38腫瘍細胞株の成長を縮小させることができることを示せた。予想と異なり,PD-1が薬剤の投与がないときでも減少してしまうことがわかったが,細胞レベルでの実験で減少を抑制することができたため,本システムの欠点の改良の可能性があることもわかった。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤投与がないときにPD-1が減少してしまう,いわゆるリークの改良,および,ゲノム編集を用いてヒト血液細胞にデグロンシステムを導入した場合の抗がん作用の検証を,免疫不全マウスを用いて行う。
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