今年度も引き続きSof2やSof3にビオチン化酵素(BioID2、TurboID、およびUltraID)を結合させたトランスジーンを持つマウスを作製した。Sof2あるいはSof3を欠損(knockout; KO)させたマウスにこのトランスジーンを持たせて、野生型雌マウスと同居させたところ、複数のラインにおいて雄妊孕性が回復した(このトランスジーンを持たないKO雄マウスはほぼ不妊)。この結果は、トランスジーンから作られる融合タンパク質は正常な機能を持つことを示唆している。そこで、作製したトランスジェニック雄マウスの腹腔内に先行文献に従って24μg/gのビオチンを3日間投与した。その後、生殖細胞からタンパク質を抽出して、ストレプトアビジン抗体を使ってウェスタンブロティングを行ったところ、特異的な複数のバンドを検出できた。今後、ストレプトアビジンビーズを使ったpull down assayと質量分析により近接するタンパク質を同定するとともに、それらの因子の生理学的機能を遺伝子欠損マウスを作製して解析する予定である。 受精関連因子についても種間差が存在することが分かっている。現在までに、既にSof2や3を欠損するラットを作製していたが、次世代へ変異を伝えることができなかった。そこで今年度は、CRISPR/Cas9を使って改めてSof2や3をKOしたラットを作製した。今後、まずはKO雄ラットを野生型雌ラットと交配させて、Sof2や3の欠損が雄妊孕性に与える影響を評価したい。
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