薬物代謝関連遺伝子をヒトと実験動物で置き換えたヒト化動物は、ヒト特異的な薬物代謝や安全性を予測する上で大きな役割を果たすと考えられる。本研究では医薬品開発のスピードアップと成功確率の向上を目指して、実験動物の中でも経時採血が可能、毒性試験等の背景データが豊富なラットを用いてヒト化動物を作製し、評価を行った。本年度は以下の研究を進めた。1)昨年度に引き続き、ヒトCYP3A遺伝子導入ラット、ヒトPXR遺伝子導入ラット、ラットCyp3a破壊ラット、ラットPxr破壊ラット、をそれぞれ交配することで、完全なヒト化CYP3A/PXRラットを作製し、繁殖維持した。2)上記で繁殖したヒト化CYP3A/PXRラットを用いて、in vivoでの評価を実施した。ヒト化CYP3A/PXRラットにおける薬剤応答性をin vivoで確認するため、ヒトPXR活性化剤リファンピシンを経口投与した後に、CYP3A基質であるトリアゾラムを経口投与した。経時的に採血し、得られた血漿を用いてトリアゾラムおよびその代謝物濃度をLC-MS/MSを用いて測定したところ、リファンピシン前投与によるトリアゾラム血中濃度の低下、および代謝物濃度の上昇が認められた。作製したヒト化CYP3A/PXRラットは機能的な酵素誘導が引き起こされることが明らかとなった。3)昨年度に作製したヒトCYP3A遺伝子クラスターとヒトMDR1遺伝子が搭載された人工染色体ベクター(CYP3A-MDR1-MAC)を保持するキメララットをこれまでに作製したCyp3a破壊ラットとMdr1破壊ラットと交配することで、完全なヒトCYP3A/MDR1ヒト化ラットを作製することに成功した。
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