研究課題/領域番号 |
20H03176
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
唐 策 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 客員教授 (00572166)
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研究分担者 |
岩倉 洋一郎 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 教授 (10089120)
Chung Soo・hyun 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (40712443)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腸管免疫 / C型レクチン / 腫瘍免疫 / Dectin-1 |
研究実績の概要 |
今年度では、コロナウイルス感染流行のため、研究始まったのは5月以降だったが、計画通り全体的に順調に進んでおり、1.腸管免疫疾患におけるDectin-1の機能解析において、APCmin-Dectin-1KOマウス受精卵を用いて、Dectin-1下流のIL-22bp、Card9のとトリプルミュータントマウスの作製が成功し、今これらのファクターを介する大腸腫瘍形成におけるDectin-1の役割を解析している。また、Dectin-1と下流サイトカインIL-17Fによって誘導される抗菌ペプチドAngionenin-4の解析について、単独欠損マウスの作製が成功し、今その欠失により腸内細菌の変化やDSS大腸炎のフェノタイプ解析が進んでいる。2.NK細胞依存性腫瘍の病態制御におけるDectin-1とDectin-2の機能解析について、従来法で作製したDectin-1と2がNK1.1が欠失するためCRISPR法で新しくDectin-1/2欠損マウスの作製が成功し、細胞確認したところ、NK1.1が正常であることがわかったため、今これらのマウスを用いてB16メラノーマの腫瘍の肺転移と増殖にたいするDectin-1/2本当の役割を解析している。3.腸内細菌と腸管制御性T細胞(Treg)が肺疾患に及ぼす影響の解析について、Dectin-1欠損マウスで定着が増加した乳酸桿菌Lactobacillus murinusがWTマウスに植えたところOVA気道過敏症の症状が抑制され、同時に腸管と肺のTreg両方とも過剰増殖していることを見出し、腸管で増えたTregが肺に移動し、肺の炎症を抑えることを結論とし、その研究成果を今年5月の国際著名免疫学誌J. Immunolで発表した。4.ほかのC型レクチン受容体Clec1a、Clec12bとDCIRの自己免疫と腸管免疫疾患における役割の解析も予定通り進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定としては、今年度でC型レクチン受容体とそれらの下流関連遺伝子の欠損マウスをできる範囲内で作製し、特に予想外にコロナウイルス流行の影響でマウス施設の出入りと使用は非常に厳しく制限されたため、マウス交配や受精卵の採取、遺伝子導入操作とその後の卵管移植作業の計画に大変大きいな影響を及ぼしたが、殆どの遺伝子導入操作による遺伝子の改変が成功し、その後のマウスの交配と繁殖も順調に進め、現在までIL-22bp,CARD9,Dectin-1,Dectin-2,Ang4合計5系統の遺伝子欠損マウスをたっだ一年で作製できたことは、当初の予定より大きく進展していると言える。一方、作製成功だけではなく、F0でできた欠損マウスを用いて、腸内細菌の変化や各組織の細胞の異常解析も同時に進行し、来年度の研究用マウスを増やしながら、ベーシックなデータを得ており、今後の研究方針の基礎を蓄積してきた。また、Clec12bとDCIRの大腸炎と腸管腫瘍の病態形成における役割の解析が大きく進め、これらの受容体の下流シグナルによる腸管関連疾患に対する制御メカニズムがほぼ完了し、2021年度に論文をまとめる見込みであり、予定より研究の進展が速まっている。さらに、腸内細菌と腸管制御性T細胞の全身に及ぼす影響の解析について予定よりはるかに進展しており、本基盤研究が始まる前から半分以上残されていた研究内容を一年で完成させ、今年3月に著名免疫科学誌J. Immunolにアクセプトされ、雑誌のTop readにも選ばれたため、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度において、現在までの研究計画に従って、以下の課題項目こと順番通り進める予定である。1.腸管免疫関連疾患におけるDectin-1の機能解析において、IL-22bpとCard9の欠失によってAPCmin-Dectin-1KOマウスの腸管腫瘍形成の変化がキャンセルできるかを調べ、Dectin-1シグナルの下流因子の役割を明らかにし、Dectin-1を介する腸管腫瘍制御機構の解明に繋げる。2.NK1.1分子がNK細胞のマーカーであるだけでなく、受容体としてNK細胞活性化にも働いているため、その分子の正常発現Dectin-1と2の遺伝子欠損マウスの再作製が成功したことによって、2021年度にB16メラノーマの肺転移モデルでがん細胞の転移と増殖に対するDectin-1と2の制御機構の解析を実施する予定である。3.免疫関連疾患の病態形成おけるClec12aの機能解析について、Clec12aの遺伝子欠損マウスを2021年度に作製成功させる予定で、まずF0の欠損マウスでDSSとTNBS大腸炎や、AOM+DSS大腸腫瘍モデルを用いてこのC型レクチンの制御役割の初期解析を行う予定である。4.自己免疫疾患におけるClec1aの役割の解析について、2021年度から中枢神経組織の内皮細胞や樹上細胞にこのC型レクチンの発現を同定してからこれらの細胞上のClec1aシグナルが自己免疫疾患の病態制御にどのように働くか、その分子メカニズムの解析を行う予定である。5.大腸炎と腸管腫瘍形成におけるClec12bとDCIRの役割解析について、2021年度に最後に残したシグナルメカニズムの部分を完了させてから、論文作成と投稿する見込みであり、できるだけ年度内にアクセプトされると予定している。6.ほかのC型レクチンメンバーの遺伝子欠損マウスの作製と免疫機能の解析も予定通り順次実施する予定である。
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