研究課題
本年度は、Hmga2によるクロマチン制御機構の解明を目指した。まず、in vitro再構成ヌクレオソームのシステムを用いることで、Hmga2がどのようにクロマチン構造を制御するかを調べた。その結果、Hmga2はヌクレオソームに直接結合し、クロマチンをの凝集状態に影響を与える作用があることがわかった。この結果は、これまで考えられてきたHmga2の分子機能とは異なる作用機序であり、非常に新規性が高い。また、神経幹細胞の中でのHmga2の役割についても、Hmga2が結合する領域はクロマチン状態が特殊であることを見出しており、in vitroの結果と合っていた。以上より、本年度の研究によりHmga2の未知の分子機能を明らかにすることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
これまでHmga2はクロマチンに結合して作用があると考えられてきたが、実際にそれは検証されていなかった。しかし、本年度の研究によりHmga2はヌクレオソームに結合して機能すること、そして神経幹細胞内でも同様の作用があることがわかった。これは、Hmgaという多くの細胞に発現する基本的なクロマチン構成因子の分子機能を明らかにしたという点で新規性、重要性が高い。
今後は、本年度に発見したHmga2の分子機能が神経幹細胞の運命制御にどういった役割を果たしているかを明らかにすることを目指す。具体的には、Hmga2をノックアウト・過剰発現したときに神経幹細胞内でどういった遺伝子発現の変化が起きるかをRNA-seqにて、クロマチン構造への影響をATAC-seqやHi-Cにて、エピジェネティック状態への影響をCUT&Tagにて調べる。また、神経幹細胞の分化運命への影響をマウス胎児の脳切片を用いた解析で調べる。これにより、Hmga2が神経幹細胞で果たす役割を分子レベルから組織レベルまで多階層にて明らかにすることができると期待される。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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