研究課題/領域番号 |
20H03181
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
黒柳 秀人 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30323702)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 線虫 / RNAプロセシング / mRNA前駆体 / 遺伝子発現 / 代謝標識 |
研究実績の概要 |
本研究では、線虫の生体で組織特異的にRNAを代謝標識して濃縮する手法を開発し、主要組織におけるmRNAのRNA-seq解析を行って、線虫における組織特異的選択的プロセシングの概要を明らかにし、転写と共役したmRNAプロセシングの進行過程と組織特異的選択的プロセシングパターンとの関連性を明らかにして、この生物種における選択的mRNAプロセシングの制御機構を体系的に理解することを目指している。 線虫のイントロンの寿命のゲノムワイドな解析を行った。線虫に4-チオウリジンを与えて新生RNAを代謝標識し、5、10、30、90分後に全身の細胞核の尿素不溶性画分からチオ標識RNAを精製してRNA-seq解析を行い、エクソンリードとイントロンリードの比率の経時変化から個々のイントロンの半減期を算出した。発現が検出された約10,000個の遺伝子の全約60,000イントロンのうち約半数は5分間の代謝標識試料でもイントロンリードがほとんど検出されないほど寿命が短く、それらの大半は100塩基以下の特に短いイントロンだった。 一方、ウラシルのサルベージ経路の酵素の変異体を入手あるいはゲノム編集で作製してスクリーニングし、シチジン/ウリジン一リン酸キナーゼをコードする遺伝子の変異体では4-TUがほとんどRNAに取り込まれないことを見出した。そこで、変異体の特定の組織にcDNAを発現させることで、組織特異的に発現するレスキュー株を作製した。これらの株は、各組織における遺伝子発現の解析、および新生RNAの動態解析に利用できると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、作製した組織特異的レスキュー株を用いて新生mRNAの代謝標識を行い、新生RNAを精製して、標的組織のmRNAが濃縮できているか確認を行う予定であった。またしかし、代表者の異動およびそれに伴う実験装置の移転とその後の実験系の立ち上げに時間を要したこともあり、結果が出るには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
組織特異的にRNAを代謝標識するTU-tagging法を確立する。TU-taggingだけではRNAを十分に組織特異的に濃縮できない場合は、さらに組織特異的に蛍光タンパク質を発現するトランスジェニック線虫株を用い、セルソーターで当該組織の細胞を濃縮することで特異性の向上を図る。 前項で確立したTU-tagging法を利用して、体壁筋、神経系、咽頭筋、腸の4組織について、組織特異的にRNAをチオ標識する。虫体全体からRNAを調製してチオ標識RNAを精製しrRNAを除去してRNA-seq解析することで、野生型線虫における各組織の成熟mRNAの選択的スプライシングパターンを網羅的に明らかにする。さらに、虫体から細胞核を調製して核RNAを調製してからチオ標識RNAを精製しrRNAとポリA+ RNAを除去してmRNA前駆体を全長シーケンシング解析する。
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