研究課題/領域番号 |
20H03183
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 眞理 京都大学, 医学研究科, 客員准教授 (90761099)
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研究分担者 |
加賀谷 勝史 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任研究員 (00580177)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 染色体融合 / テロメア脱保護 / M期停止 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
本研究計画では,がん化のごく初期課程であるテロメアクライシス期に,細胞の性質を決定する染色体がいかにして不安定化し,細胞の運命に影響を与えるかという課題に取り組む.特に,異なる種類の染色体融合が引き起こす表現型,及び染色体融合の表現型の一つとしてのM期テロメア脱保護の分子メカニズム,という2つの側面から,テロメアクライシス期の染色体融合の影響を理解することを目指す. 上記の目的を達成するために,以下の2つのプロジェクトを遂行する.①研究代表が独自に開発した,染色体融合を個々の細胞レベルで追跡できる,染色体融合可視化システム(FuVis)の発展・応用による,複数の異なる種類の染色体融合の運命解析,②研究代表者が発見した,染色体融合の結果として引き起こされる「M期テロメア脱保護」現象の分子メカニズムの解明. ①においては,予定していたX染色体の環状化を可視化できるFuVis-XqpRINGの開発を目指し,候補となるクローンを複数獲得した.その結果,環状染色体を示す蛍光タンパク質を発現する細胞が得られたが,集団中に占める割合が0.1%以下と非常に低いことが分かった.一方,プロジェクト②では,研究協力者によって作成された,TRF1,及びTRF2の,Aurora Bによるリン酸化候補部位に対する特異的抗体を利用することで,これらの部位が実際にAurora Bによってリン酸化されていることを明らかにした.また,これらの部位のリン酸化模倣変異が,M期テロメア脱保護を促進することを明らかにした.これらの結果より,昨年度に設定した「TRF1がAurora Bと結合してテロメアにリクルートすることで,TRF2をリン酸化し,これによってTRF2によるBTR複合体の阻害能が制限され,テロメアが脱保護される」という仮説が検証された.これらの成果を複数の学会で発表し,投稿の準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト①では,ヒトX染色体の完全な配列が公表されたことにより,X染色体の改変がより容易になったことで研究が加速し,予定されていたFuVis-XqpRINGを構築することに成功した.複数得られた候補クローンにおいて,環状染色体の誘導と可視化を試みたところ,環状染色体の誘導を示す蛍光タンパク質の発現が観察されたものの,効率が非常に低いことが分かった.このような状況の対処法として予め想定していた,Cre-loxPシステムを用いた系も試行したが,効率は低いことが分かった.これらの結果は,染色体の両腕が融合する環状染色体の形成効率が非常に低いことを示唆している.一方,プロジェクト②においては計画していた研究が順調に進行し,論文としてまとめる段階まで至ったため,全体としての研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクト①については,FuVis-XqpRINGの開発に成功した一方,効率が非常に低いために,解析が容易ではないことが分かった.本研究計画では,最終的な目標を「様々な染色体融合の運命を理解すること」としている.そこで,すでに構築しているFuVis-XpSISを応用し,姉妹染色分体融合の運命解析へと,研究の方向性を微調整することとする.我々は既に,FuVis-XpSISを用いることで,たった1つの姉妹染色分体融合が微小核形成を誘導することを報告している.そこで,核内の染色体融合によって形成された核外の核酸(微小核)が,どのような細胞運命を引き起こすかを解析する.このような核外核酸に対しては,自然免疫応答が引き起こされることが報告されているため,端緒として自然免疫応答に着目した研究を推進しつつ染色体融合の運命理解を目指す.プロジェクト②については,当初の計画通りに,TRF1-BTR-AURKBによるM期テロメア脱保護の分子メカニズムについて明らかにしたことを取りまとめ,論文として発表する.さらにこの研究の過程で,BLMの所属するRECQヘリケースファミリーの他の因子にも着目して解析を進めたところ,興味深い結果を得た.そこで,引き続きM期テロメア脱保護の分子機構のさらなる解明を目指して,RECQヘリケースファミリー因子に対象を拡張して研究を展開する.
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