研究課題/領域番号 |
20H03186
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 達郎 九州大学, 理学研究院, 教授 (50452420)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミスマッチ修復 / ツメガエル卵抽出液 / 相同組換え / ゲノム安定性 / DNA二重鎖切断損傷修復 |
研究実績の概要 |
MutSホモログに依存したミスマッチ応答機構は、DNA合成エラーを修復して複製正確性を高めるだけでなく、類似配列間での組換えエラーを抑制して組換え正確性も高める、遺伝情報の品質管理機構である。しかしながら、組換えエラー抑制がどのような反応によって起こるかは十分に理解されておらず、何が合成エラー修復と組換えエラー抑制を分岐させるかもよく分かっていない。さらに、これらがクロマチン上で機能するしくみも未解明の点が多い。我々は、これまでにツメガエル卵抽出液を用いて類似配列間での組換えエラー抑制の試験管内再現に成功している。本年度は、この系をさらに発展させ、組換えの正確性を評価可能な実験系を構築した。これを用いて、既知のミスマッチ修復因子が組換え正確性に与える影響を解析し、MutSαが組換えの正確性維持に重要であることや、MutLαは特に重要ではない事などを明らかにした。また、その他の因子についても解析を進め、ヘリカーゼについても組換え正確性を高める因子を特定した。さらに、複製正確性、組換え正確性の両方について精製タンパク質による試験管内再構成を進めている。これまでにRad52による一本鎖アニーリング反応の再現や、MutSαとExo1によるミスマッチ依存的な鎖削り込みなどの再現を確認しており、現在はこれらの反応の高効率化や、反応に関与する他の因子の導入などを試みている。またSmarcad1とFACTに依存したヌクレオソームリモデリングについても精製タンパク質による試験管内再構成に成功しており、蛍光標識を用いてリモデリング反応時のヒストンの動態を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ツメガエル卵抽出液を用いた組換え正確性の評価系の構築や、精製タンパク質による試験管内再構成系の構築など、順調に進展している。新たな実験系の構築に伴って分子メカニズムの理解も進展しており、当初計画に照らしておおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に現行の実験系を進展させ、各反応の分子メカニズムに対する理解を進める。先年度の研究から、組換え正確性の定量評価が可能になっており、類似配列間組換えの抑制に関与する因子の探索や、既知因子の寄与の評価などを進めていく予定である。試験管内再構成についても、系の高度化、洗練を進め、分子メカニズムの理解に向けて実験系を構築していく予定である。
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