研究課題/領域番号 |
20H03187
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中條 岳志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50788578)
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研究分担者 |
富澤 一仁 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40274287)
魏 范研 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90555773)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | tRNA修飾 / ウイルス / HIV-1 |
研究実績の概要 |
ウイルス増殖におけるtRNA修飾の役割を明らかにする研究として、当初計画の仮説通りの結果を得られなかったために代わりに実施したHIV-1増殖における宿主tRNA修飾の研究が、大学院生の尽力により大きく花開いた。この研究では、(1) HIV-1ゲノムRNA複製における逆転写が適切な位置で止まるためには宿主リジンtRNAの58位のm1A修飾が必要であること、(2) 状況によっては宿主リジンtRNAの54位のm5Um修飾も逆転写の適切な位置での停止に重要であること、(3) 宿主tRNAの58位のm1A修飾酵素は宿主細胞におけるHIV-1タンパク質の蓄積にも重要であること、(4) ヒトtRNAの58位のm1A修飾が54位のm5U修飾の導入に重要であることを見出した。この成果は、Nucleic Acids Research誌で公開された。 また、当初の計画とは異なるが、ジカウイルス感染における細胞内修飾ヌクレオシドの役割を所属研究室が明らかにした。この研究では、細胞内RNAが分解されて生じた修飾ヌクレオシドモノマーは、ENT1、ENT2というトランスポーターにより細胞外に積極的に排出されることと、細胞内の修飾ヌクレオシドモノマーがジカウイルスの増殖を促進することを明らかにした。これは分担者である魏教授と大学院生が主に進めた研究であり、この成果はRNA Biology誌で公開された。 さらに、あるtRNA修飾酵素の全身ノックアウトマウスが胚性致死であることと、この遺伝子の心臓特異的ノックアウトマウスでは、週齢が上がり中年になると若齢時(14週)よりも心臓の異常が進展していることを報告する論文をリバイス中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の仮説通りには研究が進行しなかったが、密接に関連したウイルス増殖における宿主RNA修飾の研究が進展し、2報の論文に結実して公開できた。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトのコンセプトである、tRNA修飾の生体機能と関連疾患の発症機構を引き続き探究する。特に、RNA修飾病の中で最も原因変異遺伝子数が多い知的障害について、その発症機構を新たに解明する。具体的には、現在解析中の知的障害モデルノックアウトマウスの解析を実施する。加えて、別のtRNA修飾酵素のノックアウトマウスを作製して解析する。
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