| 研究課題/領域番号 |
20H03188
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| 研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
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研究代表者 |
三好 啓太 国立遺伝学研究所, 遺伝メカニズム研究系, 助教 (20423395)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 内在性レトロウイルス / 細胞外微粒子 / トランスポゾン / 細胞間情報伝達 |
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| 研究実績の概要 |
様々な生物のゲノムに存在する転移因子はゲノム進化の推力であるともに、ゲノム安定維持の脅威でもある。そのため、宿主により転移因子の発現は適正に制御されている。興味深いことに、転移因子発現制御機構が欠失したショウジョウバエ変異体の卵巣内において、転移因子である内在性レトロウイルスの一部が卵巣性体細胞内で過剰発現し、細胞外微粒子として生殖細胞へ伝播されていることが報告されている。正常なショウジョウバエ卵巣でも一定の内在性レトロウイルスの発現が観察されることから、内在性レトロウイルスによる細胞外微粒子を介した細胞間情報伝達機構の存在が期待される。本研究では、独自の卵巣性体細胞由来の培養細胞（OSC）を用いることにより、大量に純度の高い内在性レトロウイルス由来の細胞外微粒子を精製でき、生化学的な解析が可能になる考えた。これにより、どのように粒子が形成・伝播され、どのような生理的意味を持つのか、その形成と伝播機構の包括的な理解を目指す。
これまでに、OSC培養細胞の培養上清から微粒子画分を得た。この画分に含まれる微粒子のサイズは約80nmであり、一般的なウイルス粒子の大きさに相当していた。さらに、この画分中に含まれるRNAについてqPCRおよびRNA-seqにより解析したところ、数多くの内在性レトロウイルス由来のRNAが含まれていた。また、この画分中に含まれるタンパク質について質量分析により同定を進めている。以上の解析から、卵巣整体細胞由来の培養細胞OSCから、内在性レトロウイルス由来の微粒子が放出されることが示唆された。一方で、細胞外微粒子画分に多く含まれた内在性レトロウイルスにコードされるタンパク質に対するモノクローナル抗体を作製し、本抗体を用いた細胞外微粒子の精製を進めている。これにより、特異的な内在性レトロウイルス由来の微粒子について詳細な解析が可能となる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外微粒子画分を精製し、その含有物について解析を進めた。RNA-seqにより、多くの内在性レトロウイルス由来のRNAを同定した。またその詳細な解析により、細胞外に放出される内在性レトロウイルスの選択性が観察された。どのような機構により、その選択が行われているのか、非常に興味深い。また、全体的な内在性レトロウイルス由来の細胞外微粒子の解析だけではなく、個々の内在性レトロウイルス細胞外微粒子についても解析を進めている。このために、細胞外微粒子画分で多く観察された内在性レトロウイルスRNAにコードされたタンパク質に対するモノクローナル抗体の作製を試み、成功した。複数種のレトロウイルス由来タンパク質に対する抗体であり、これを用いて、それらのを含む細胞外微粒子の精製が可能になると考える。
一方で、当初は期待していたなったが、特定内在性遺伝子のmRNAが細胞外微粒子画分に含まれることが明らかとなった。内在性レトロウイルスとの関連は不明ではあるが、遺伝因子の細胞間情報伝達という点において、非常に重要な知見が期待できる。
これまで、内在性レトロウイルスに由来する細胞外微粒子の研究は知見に乏しく、かつ、その全体像と個々の微粒子の違いを示すという点において、本研究の意義は大きい。これらのことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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| 今後の研究の推進方策 |
これまでに、OSC培養細胞より得た細胞外微粒子に内在性レトロウイルス由来RNAが数多く含まれることが明らかになった。これらのRNAが、どのゲノム領域から発現してるのかを同定するため、RNAのlong-read-seqにより、その由来を明らかにする。これにより、RNA全長とそれらに含まれる細胞外微粒子形成のための重要配列を明らかにする。
内在性レトロウイルスのコードするタンパク質に対するモノクローナル抗体を用いた細胞外微粒子精製法を確立し、個々の細胞外微粒子の構成因子の同定とその比較を行い、その全体像と個々の特異性を明らかにする。
内在性レトロウイルス細胞外微粒子構成するタンパク質についてのOSC培養細胞を使ったノックダウンにおける細胞外微粒子形成および伝播に対する影響を観察し、重要因子の同定を行う。さらに、内在性レトロウイルス細胞外微粒子形成をモニターできるレポーターショウジョウバエを作製し、同定した因子のショウジョウバエ変異体における微粒子形成および伝播への影響を解析する。一方で、これらショウジョウバエ変異体の卵巣形成における表現型の観察・比較を行い、内在性レトロウイルス細胞外微粒子を介した個体内送受機構の意義を明らかにする。
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