研究課題
蛋白質の分子機能は立体構造によって制御されている。NMRは細胞内の蛋白質を細胞が生きている状態のまま構造解析できる唯一の手法であるが、生細胞内での蛋白質の構造解析は再現性や検出感度に問題があり、今までヒト細胞中での構造決定の成功例はない。そこで、本研究では独自技術で超高感度化に成功した生細胞内NMR法(in vivo/in cell NMR)を用いてヒト生細胞内蛋白質の立体構造解析技術を開発する。また、超高感度化した生細胞内NMR法を発展させ、ヒト生細胞内の蛋白質の立体構造変化やリン酸代謝のリアルタイム計測を実現する。本研究では以下4つの研究項目を推進している。項目(1):分子量6千のモデル蛋白質GB1とHeLa細胞を用い、ヒト生細胞内NMRの高品質データの取得方法を詳細に検討することで、生細胞内蛋白質の立体構造解析技術を確立する。項目(2):2D 1H-15N HSQCスペクトルを用いて15N核の緩和時間解析を行い、生細胞内蛋白質の主鎖の運動性評価技術を確立する。項目(3):時間分解能の高い2D 1H-15N HSQCスペクトルと1D 31Pスペクトルを用い、ヒト生細胞内の蛋白質の立体構造変化やリン酸代謝を分単位精度でリアルタイム検出する技術を確立する。項目(4):バッファー中とヒト細胞中での立体構造や運動性の違いを明らかにするとともに、蛋白質間相互作用や蛋白質薬剤相互作用など分子間相互作用の違いについても解析を進める。2020年度は、上記研究項目(1)と(2)を重点的に推進し、モデル蛋白質GB1を用いて生細胞内蛋白質の立体構造解析技術と生細胞内蛋白質の主鎖の運動性評価技術を概ね確立することに成功した。また、研究項目(3)(4)にも着手した。
2: おおむね順調に進展している
研究期間を半年間延長することで概ね当初計画通りの成果が得られた。研究期間の延長は利用予定であった超高感度NMR装置故障の修理が理由であり、細胞内構造解析技術・運動性評価技術の確立を半年間延長して実施した。
研究自体は概ね順調に進展しているため、当初の研究計画通り進める。研究期間を半年間延長した影響で、今後はより効率的に研究を進める必要がある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Magnetic Resonance
巻: 322 ページ: 106878~106878
10.1016/j.jmr.2020.106878