研究課題
3本のDNAを調製し、互いに鎖の半分の領域が、別のDNAの半分の領域と相補的な配列となるようにした。これにより3本のDNA鎖は水素結合によって互いに会合し、3本のDNA鎖からなる一つの構造体を形成する。さらに3本のDNA鎖の5’末端には、共通の回文式配列を付加した。これにより、3本のDNA鎖からなる構造体は、さらに高次の構造体を形成し得る。この3本のDNAを溶解した溶液は、液液相分離を生じてドロプレットが形成される事が、顕微鏡観察によって明らかになった。顕微鏡下におけるドロプレットの動きを、ビデオに記録する事ができた。上記の溶液をNMR試料管に入れて静置すると、液液相分離により2層となった。この状態における1次元NMRスペクトルを取得することができた。また、並進の拡散係数に関する情報を取得できる2次元NMRスペクトルを取得する事にも成功した。核酸と相互作用するFUSタンパク質に関し、一様に分散した状態にピペッティングによるせん断応力を作用させると、アモルファスな凝集体が形成される事を見出した。この遷移は、液液相分離状態を経由している可能性がある。また、FUSが特異的に相互作用する核酸を加えると、上記の構造遷移が阻害される事も見出した。なお、非特異的な核酸を加えた場合は、構造遷移の阻害は見られなかった。細胞内における核酸の構造をインセルNMR法によって解析した結果、ヒト生細胞中において3重鎖構造が形成されている事を直接的に証明する事に初めて成功した。
2: おおむね順調に進展している
液液相分離によって生じたドロプレットの動きを、顕微鏡を用いてビデオレートで追跡する事ができた。また、液液相分離を生じた溶液に関し、NMR法を用いた解析を進行させた。インセルNMR法によって、ヒト生細胞中において非標準型構造の核酸が存在する事を示す事もできた。
液液相分離を生じた核酸及びタンパク質に関し、顕微鏡とNMRを用いて挙動・構造・ダイナミクスについての情報を取得し、液液相分離の実像に迫る。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 11 ページ: 9523
10.1038/s41598-021-89075-w
Chemical Communications
巻: 57 ページ: 5364-6367
10.1039/D1CC01761F
http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/bio/