研究課題/領域番号 |
20H03193
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松木 陽 大阪大学, 蛋白質研究所, 准教授 (70551498)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛋白質動的平衡構造 / 動的核分極(DNP)法 / 固体NMR / GPCR |
研究実績の概要 |
分布のある構造アンサンブルの検出と構造の特徴づけをGPCRで行う前に、計画通り、比較的単純な系をモデルとして方法論を開発に供した。モデルには脳神経疾患関連の天然変性蛋白質(IDP)であるαシヌクレイン(AS)をとった。
ASのアミロイド線維が病態と深く関係することは知られるが、線維の発生機構は未だ不詳である。そこでASが液液相分離(LLPS)状態からアミロイド線維へ転換する経路を仮定し、ASの構造アンサンブルの変遷を経時的に追跡することを目的にとった。信号分離を最適化する標識法の検討を行った結果、アミロイド原生NAC領域直近に存在するHis-53を選定し、His選択的に13C, 15N完全同位体標識のASの発現・精製系を構築した。また構造分布を保ったまま固体NMR試料管に移送するプロトコルも作成した。LLPSドロップレット形成過程を実体顕微鏡、蛍光顕微鏡、CDスペクトル、ThTアッセイで追跡し、ランダムコイル状態から、ベータ性の向上する様子をドロップレット形状の変遷とともに捉えた。ASアミロイド線維がドロップレット内から発生していることも蛍光顕微鏡観察で証明した。
DNP-NMR測定に用いるシーケンスとしては、まずHis-53が関与する平衡構造分布を検出することを目的に、残基内相関・二次元相関測定法を最適化した。特に、巨大な超分極を扱うDNP測定では装置の長期超安定性が従来以上に求められることが判明し、装置と測定室温度安定性などの向上に注力した。この結果、解析に耐える質の高い相関スペクトルの取得に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画にしたがってモデル蛋白質の調製法、試料マウント法を検討し、重要な知見を得た。またDNP測定用のパルスシーケンスの作成、最適化、装置の長期安定性の向上などで、今後のより低感度測定においてもノイズを低減して、有用な情報を得られるよう基盤を作った。
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今後の研究の推進方策 |
計画通りすすめる。構造アンサンブルの解析手法、評価手法について検討を始める。最終標的蛋白質のGPCRも発現法の検討に入る。
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