研究課題
最終標的蛋白質のGPCR(アドレナリン受容体)の調製法の検討を始めた。同位体標識の自由度などを考慮し、今年度は無細胞合成システムの最適化に注力した。テンプレートDNPの最適設計、FLAGタグの導入、反応時間最適化、コレステロール添加などを試み、ゲルアッセイ、ウェスタンブロッティングで同定、定量を行った結果、目的GPCRの発現に成功した。今後は収量の改善に務めると同時に、得たGPCRの脂質二重膜再構成へと進む。DNPによる高感度に基づいて、目的信号を高次元スペクトル展開する新規ラジオ波パルス列を作成した。構造分布の残基をまたいだ相関情報を取得する目的で、残基間主鎖信号相関パルスを作成、モデルペプチド試料で検証した。目的の相関信号の検出に成功したが、応用に向けてさらなる感度の改善が望ましい。より高い感度の測定をめざして、条件の更なる低温化にも挑戦した。ヘリウム用ベローズポンプの追加増強工事に加え、真空断熱度の向上などで20Kでの安定DNP測定を実現した。これに加えて、極低温検出器を新たに導入したプローブを作成し、定量的な性能試験を行った結果、純粋に熱雑音の低減から5倍程度の感度利得があると分かった。DNP感度向上に加え、検出系の熱雑音抑制の効果から、総合感度利得は従来法の4000倍を超えることを示し発表した。並行して、高次元NMRスペクトル線形の解析から、構造アンサンブルの情報を抽出する新しい解析法の開発に着手した。蛋白質構造と化学シフトデータベースの相関をもとに、ベイズ推論を基盤とした手法でスペクトル解析し、構造アンサンブルの情報を抽出する方法である。これをαシヌクレインの液液相分離状態からアミロイド線維形成過程の構造分布変化の解析に応用、溶液NMR、CD、ThT蛍光アッセイとも合わせ、構造分布の時系列に沿った変遷を記述した。
2: おおむね順調に進展している
計画にどおり最終標的蛋白質GPCR(アドレナリン受容体)の無細胞合成法の検討に入った。またDNP測定用のパルスシーケンスの作成と最適化、モデル試料での検証を行った。装置改良によるさらなる感度向上で、実効感度は従来法の4000倍超となり、今後の応用測定を有利に進められる基盤を作った。
計画通りすすめる。GPCR調整法の確立を目指し、残基間相関法も完成に近づけ、応用測定に備える。構造アンサンブル情報取得のための計算科学的方法論を発展させ、GPCRへの応用可能なレベルに近づける。
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Journal of Magnetic Resonance
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Phys. Chem. Chem. Phys.
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