研究課題/領域番号 |
20H03194
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
秋田 総理 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 准教授 (50751418)
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研究分担者 |
宮崎 直幸 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 助教 (00634677)
加藤 公児 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (30452428)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光合成 |
研究実績の概要 |
本研究では、赤色系統の光合成生物である褐藻から光化学系I-フコキサンチンクロロフィルa/cタンパク質超複合体(PSI-FCPI)と光化学系II-フコキサンチンクロロフィルa/cタンパク質超複合体(PSII-FCPII)を単離し、その原子構造をクライオ電子顕微鏡単粒子解析法によって決定する。その構造を基に、複合体中の色素の配置や結合様式、タンパク質サブユニット間の相互作用、エネルギー伝達様式を解明する。さらに、緑色系統の光合成生物が持つPSI-光捕集タンパク質超複合体(PSI-LHCI)やPSII-光捕集タンパク質超複合体(PSII-LHCII)と比較する事で、異なる波長の光を吸収するために、赤色系統の光合成生物がどの様に光合成分子装置を進化させてきたかを明らかにする。今年度はコロナウイルスによって出発材料の褐藻の入手が困難であったため、PSI-FCPIに絞って、精製を行なう事にした。 褐藻Cladosiphon okamuranusをビーズショッカーで念入りに破砕し、遠心分離でチラコイド膜を分離後、回収したチラコイド膜から界面活性剤を用いてPSI-FCPI可溶化した。チラコイド膜の濃度・界面活性剤の種類・界面活性剤の濃度・温度・可溶化の時間などを検討し、SDS-PAGEで確認した。最適な可溶化条件を用いて、ショ糖密度勾配遠心分離法・陰イオン交換クロマトグラフィーでPSI-FCPIを更に精製し、SDS-PAGE、Native-PAGE、吸光スペクトル解析、ネガティブ染色試料の透過型電子顕微鏡観察等により評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
褐藻Cladosiphon okamuranusからPSI-FCPIの精製を試みた。コロナによる影響で、供給体制が停止したため、半年は精製の検討を行なうことができなかった。この褐藻をビーズショッカーで念入りに破砕した後、遠心分離で細胞残渣とチラコイド膜を分離した。回収したチラコイド膜から界面活性剤を用いてPSI-FCPI可溶化した。その際には、チラコイド膜の濃度、界面活性剤の種類、界面活性剤の濃度、温度、可溶化の時間などを検討し、SDS-PAGEで確認した。最適と思われる条件で可溶化したのち、ショ糖密度勾配遠心分離法によって精製した。その後更に、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて高純度のPSI-FCPIを精製した。サンプルの評価はSDS-PAGE、Native-PAGE、吸光スペクトル解析、ネガティブ染色試料の透過型電子顕微鏡観察等により行なった。その結果、PSI-FCPIと思われる均一な粒子が観察された。
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今後の研究の推進方策 |
クライオグリッド作成装置(Vitrobot)を用いて、精製したPSI-FCPIのクライオ電顕グリッドを作製する。試料の精製法と並んでこの電顕グリッドの作製条件は、高分解能の構造解析の成否を決定する重要なステップである。最適なグリッドを作製するためには、タンパク質濃度、溶液条件などのさらなる検討が必要である。クライオ電子顕微鏡のデータ収集は、理化学研究所等にある高性能クライオ電子顕微鏡を用いておこなう。収集したイメージの試料微動を補正し・コントラスト伝達関数の見積もりと補正を行ない、タンパク質粒子像をピックアップする。次に2次元および3次元のクラス分類を行って、インタクトな光合成超分子複合体の粒子像を選択する。そして、クライオ電顕の3次元密度図の精密化を進め、高分解能の密度図を得る。得られた3次元密度図に対して原子モデルを構築し、原子モデル精密化を行なう。
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