研究課題/領域番号 |
20H03198
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
水島 恒裕 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (90362269)
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研究分担者 |
谷 一寿 三重大学, 医学系研究科, 産学官連携講座教授 (20541204)
Kim Minsoo 京都大学, 医学研究科, 准教授 (50466835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛋白質 / エフェクター / 構造解析 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
病原細菌はエフェクターと呼ばれる病原性タンパク質を宿主細胞に分泌し、宿主の防御応答を妨げることにより感染する。病原細菌は多数のエフェクターを持ち、宿主の炎症応答・細胞接着・オートファジー等、さまざまな防御応答の経路を阻害している。本研究では防御応答の中心的な役割を担う転写因子NF-κB経路を阻害するエフェクターの分子機構の解明を目指した。 赤痢菌エフェクターIpaH1.4とIpaH2.5はNF-κB経路の活性化に働くLUBAC複合体(HOIL-1L, HOIP, SHARPINから構成)を標的とする。これまでの研究により決定したIpaH1.4とIpaH2.5のLUBAC認識部位の構造をもとに、基質に対するIpaH1.4の認識機構を解析し、LUBAC複合体のHOIPを認識する部位とHOIL-1L、SHARPINを認識する部位が異なることを明らかにした。また、IpaH1.4はHOIL-1LとSHARPINのUBL領域を認識していることを示すと共に、IpaH1.4によるHOIL-1LのUBL認識における結合親和性を解析した。 エフェクターの一つであるCifはNEDD8のGln40を脱アミド化修飾することによりGlu40に変換し、宿主の細胞周期の進行を阻害する。これまで存在が報告されていないLegionellaにおいてCif様のタンパク質を見出し、結晶化に成功していた。そこで、LegionellaのCif様タンパク質結晶を用い、X線回折データ収集を行い、野生型の結晶構造を決定した。その結果、LegionellaのCif様タンパク質はこれまでに立体構造既知なBurkholderia属のCifとは異なる構造的な特徴を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「IpaH1.4/2.5の基質認識および反応機構の解析」において、IpaH1.4が異なる領域でLUBAC複合体のサブユニットHOIPとHOIL-1LまたはSHARPINを認識していることを明らかにした。さらに、HOIL-1LとIpaH1.4の結合親和性を解析した。また、IpaH1.4と基質であるLUBAC複合体の構造解析を目指し、完全な状態のLUBACの精製条件検討を行った。「脱アミド化活性を持つエフェクターによるNF-κB活性化経路阻害機構の解析」では、基質認識に関わると考えられる部位が一般的なCifとは異なるLegionella由来のCif様タンパク質の結晶構造解析を行い、立体構造既知なCifと構造を比較した。また、これまで赤痢菌で報告されていたUbc13の脱アミド化酵素OspIの類似タンパク質が他の病原菌にも存在することを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画であげた「IpaH1.4/2.5の基質認識および反応機構の解析」において、IpaH1.4によるLUBAC複合体認識機構の解析は順調に進行し、基質認識領域を明らかにすると共に、細胞内でのNF-κB活性化経路阻害に関する解析を進めた。今後の研究として、複合体構造が未知なIpaH1.4の基質認識領域とSHARPINの構造解析を行う。また、Cryo電子顕微鏡解析によるIpaH1.4-LUBAC複合体の構造解析を目指し、完全なLUBAC複合体の精製条件の検討を行うと共に、負染色を用いた電子顕微鏡画像の測定により、複合体タンパク質の状態を解析する。 研究計画「脱アミド化活性を持つエフェクターによるNF-κB活性化経路阻害機構の解析」ではユビキチンやNEDD8に対する脱アミド化活性を持ったLegionella由来のCif様タンパク質の構造に基づいた機能解析を進める。また、OspI様タンパク質の構造、機能解析を行う計画である。
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