研究実績の概要 |
病原細菌はエフェクターと呼ばれる病原性タンパク質を宿主細胞に分泌し、宿主の防御応答を妨げることにより感染する。病原細菌は多数のエフェクターを持ち、宿主の炎症応答・細胞接着・オートファジー等、さまざまな防御応答の経路を阻害している。本研究では防御応答の中心的な役割を担う転写因子NF-κB経路を阻害するエフェクターの分子機構の解明を目指した。 赤痢菌エフェクターIpaH1.4は真核生物にはないNEL型ユビキチンリガーゼドメインを介して、NF-κB経路の活性化に働くLUBAC複合体(HOIL-1L, HOIP, SHARPINから構成)をユビキチン化し、分解へと導く。NEL型ユビキチンリガーゼの分子機構を明らかにするため、IpaH1.4NELドメインを用い、NELドメインにユビキチンが結合した反応中間状態の結晶化を行った。 エフェクターの一つであるCifはNEDD8のGln40を脱アミド化修飾しGlu40に変換することで、宿主の細胞周期の進行を阻害する。これまでCifの存在が報告されていなかったLegionellaにCifと同様の機能を持つタンパク質を見出し、立体構造を決定した。さらに、LegionellaのCifには立体構造既知のCifにはない領域が存在することを明らかにした。 グリオキシル酸回路は微生物や植物に特有の代謝経路であり、病原性酵母では感染に必須の役割を果たしている。グリオキシル酸回路の調節に関わるユビキチンリガーゼSCFUcc1の基質認識サブユニットである、Ucc1と基質であるクエン酸合成酵素Cit2の複合体構造解析に成功し、基質認識機構を明らかにした。さらに、Ucc1による代謝制御機構を解析した。
|