研究実績の概要 |
自然免疫は異物を排除するための先天的に備わっているシグナル伝達経路であり、STING経路はDNAウイルス感染など細胞質DNAに応答する主要 な自然免疫応答経路の1つである。申請者はこれまでに、小胞体膜タンパク質STINGの活性化に細胞内輸送が必須であることを見出し、その活 性化の実体がゴルジ体で起きるSTINGのパルミトイル化であることを発見してきた。一方で、細胞内でSTINGの活性化を負に制御する機構に関しては 未だに不明な点が多く残されている。本研究は、STINGが辿る各オルガネラ上において、STING経路が制御される分子機構を明らかにし、その 機構の破綻に起因する疾患の新規治療法を提案することを目的としている。 本年度では、定常状態でのCOP-I小胞を介したゴルジ体-小胞体間の逆行性輸送がSTINGの小胞体局在維持に必要であることを培養細胞を用いた実験から明らかにし、マウス個体においてこの機構が破綻するとI型IFN応答が恒常的に活性化して自己炎症性疾患となることを見出した [Z. Deng et al., J Exp Med 217, e20201045 (2020).; K. Mukai et al., Nat Commun 12, 61 (2021).]。 )。また、STINGがゴルジ体で活性化した後にシグナルを収束機構させる機構に関して解析を行った。その結果ゴルジ体で活性化したSTINGは、リサイクリングエンドソームを通過したのちにリソソームへ輸送されることを見出した。さらにこのリソソームへの輸送過程に必要な遺伝子を複数同定することができた。
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