研究課題
本研究では、生細胞における膜脂質の動的変化の生理的意義を明らかにするため、P4-ATPaseを中心に研究を進めている。本年度は、定形型分泌経路におけるP4-ATPaseを機能解析を行った。P4-ATPaseのうちで、ATP9AやATP9Bはゴルジ体に局在し、シャペロン様タンパク質のCDC50を必要としないタンパク質である。ノックアウト細胞を作製し、分泌経路を調べたところ、どちらの細胞でもVSVGの細胞膜への輸送が阻害されていることを見出した。ダブルノックアウト細胞を作製ではより顕著に輸送が阻害されていた。興味深いことに、それぞれのノックアウト細胞に野生型のP4-ATPaseとフリップ活性欠損変異体を発現させて調べたところ、シングルノックアウト細胞では、野生型のみならず変異体を発現させても輸送の阻害が回復することが分かった。しかし、ダブルノックアウト細胞では、変異体を発現させても輸送阻害の回復は見られなかった。そこで、ATP9AやATP9Bが複合体を形成するという仮説を立て調べたところ、野生型同士および野生型と変異体の間でホモおよびヘテロ複合体を形成することを発見した。したがって、分泌過程においてATP9AとATP9Bは複合体を形成して機能し、またそのフリップ活性が分泌経路に必要であることが示唆された。これまでに、ATP9AやATP9Bの基質は同定されていなかった。そこでFlippase assayに加えて新たにATPase assay法を確立し、その基質を調べたところ、ATP9Aがホスファチジルコリンを基質とする可能性を見出した。ATP9Aはゴルジ体でホスファチジルコリンをフリップすることで分泌経路における小胞形成に関与する可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Biological Chemistry
巻: 298 ページ: 102685~102685
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