研究課題/領域番号 |
20H03211
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
堀 弘幸 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20256960)
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研究分担者 |
平田 章 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60527381)
横川 隆志 岐阜大学, 工学部, 教授 (90242304)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | タンパク質 / 核酸 / 酵素 / RNA |
研究実績の概要 |
tRNA中には、様々な位置に、いろいろな修飾ヌクレオシドが存在します。これら修飾ヌクレオシドの第一義的な役割はタンパク質合成系の制御ですが、スプライシング、プロセシング、RNAの輸送、分解等ともリンクし、発生・分化、発がん、感染、免疫など高次生命現象にも影響します。21世紀に入ってから、真核生物と古細菌から、複数のサブユニットからなるS-アデノシル-L-メチオニン依存性tRNA修飾酵素が多数発見されています。これら複合tRNA修飾酵素では、結合するサブユニットによって標的tRNAや作用部位が変化し、生産される修飾ヌクレオシド自体が変化することさえあります。本研究は、複合tRNA修飾酵素の各サブユニットは、どのような役割を持ち、どのように特定のtRNAの特定部位に作用するのかを解明することを目的としています。 令和3年度は、酵母Trm11-Trm112複合体の基質tRNA認識に関して論文をまとめることができました。この複合体はtRNAの10位のグアノシンをメチル化し、N2-メチルグアノシンを生産する酵素です。この酵素は、酵母tRNAのうち、特定のtRNAのみをメチル化しますが、どのように特定のtRNAを区別しているのか不明でした。我々の研究により、Trm11-Trm112複合体は、tRNAのCCA末端、アンチコドンループの38位近傍、G10-C25塩基対、5ヌクレオチドからなるバリアブル領域を認識することが判りました。また、酵母tRNAValACC1はN2-メチルグアノシン修飾を持たないtRNAとして報告されていましたが、その一部(10-13%)はTrm11-Trm112によって細胞内でメチル化されていることも判りました。すなわち、本研究によって真核生物のTrm11-Trm112複合体がどうして特定のtRNAのみに作用するのかが解明されました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大学院生が大学で実験をできない時期があり、かつ、分担者のいる岐阜大学、徳島大学への共同研究のための出張ができない時期がありました。令和3年度後半から、徐々に研究活動が再開できましたが、当初の予想よりは遅れていると言えます。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、研究活動を普通にできる状態になりましたので、進捗状況の遅れを取り返したいと思います。複合体tRNA修飾酵素のプロトタイプとして解析していたSPOUT触媒ドメインをもつtRNAメチル化酵素(TrmH)およびTHUMPドメインをtRNA結合部位に持つtRNAメチル化酵素(Trm14)について、かなりデータがたまっていますので、これらについて、まず、投稿論文をまとめようと思います。次いで、研究に着手している複合RNA修飾酵素群(ArcS-RaSEAやTrm7-Trm732)について報告できるようデータを詰めていきたいと思います。
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