研究課題/領域番号 |
20H03212
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 勉 九州大学, 薬学研究院, 教授 (70264059)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA複製 / 複製起点 / ヘリカーゼ / 細菌 / 複合体動態 |
研究実績の概要 |
本研究では、大腸菌の複製起点oriC開裂(局所的一本鎖化)機構の普遍性の検討、両方向複製の基盤となるDnaB導入の分子動態の解明、加えて開始反応異常時のレスキュー機構の解明、さらに、DnaAを適時的に活性化あるいは不活化する3系統の制御システム(DARS系, DDAH系, RIDA系)が細胞周期と連係する分子機構の解明を目的とする。2021年度では、昨年度の進展をベースにしてさらなる進展が見られている。まず、大腸菌の複製起点oriC開裂機構の普遍性については、詳細なメカニズムが解明された大腸菌をモデルとしてとらえ、他の多くの細菌種での共通的な遺伝的背景を試験管内再構成系において再現するなどの独自の解析手法が確実に独創的な成果を生み出し、大腸菌モデルとの原理的共通性が見えるようになってきた。さらに起源生物に近縁とされる高度好熱菌での複製起点開裂機構の解析などからも重要なデータがさらに蓄積してきた。特にoriC開裂機構についての基本原理(ssDUE recruitment mechanism)の普遍性が示唆されてきた。これらにより普遍機構と多様化した機構とが理解できる基盤の構築がかなり進み、現在、論文発表の準備を進めている。DnaB導入の分子動態についても、oriC-DnaA複合体との高度な相互作用動態について明らかになってきており、その一部を論文として投稿した。開始反応ストレス時のレスキュー機構についても特異的な因子についてその機能を確認できたのでその関連因子の重要性についての解析を進めた。さらに、DnaAに対する3系統の制御システムについては、特にDARS系において、細胞周期との連係を支える重要な制御機構の解明に成功した。これは本質的にはDnaA自身による負のフィードバック制御機構であった。この発見は国際的に高く評価されている学術誌に論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
oriC開裂(局所的一本鎖化)機構の普遍性、DnaB導入の分子動態、開始反応異常時のレスキュー機構、また、DnaA制御システム(DARS系, DDAH系, RIDA系)への細胞周期との連係機構について、それぞれ重要な研究展開が達成され、学会のシンポジウムやワークショップ等で報告した。2020年はCOVID19対策による大学活動制限等により進捗がある程度遅れたが、その後は、かなり順調に研究が進展できるようなり、重要な発見にも恵まれ、遅延した分を十分取り戻すほど新たな展開が見られた。特にDARS系においては、細胞周期との連係を支える重要な制御機構の解明に成功した。これは国際的に高く評価されているNucleic Acids Research誌に論文発表した。oriC開裂(局所的一本鎖化)機構の普遍性、および、DnaB導入の分子動態に関する成果もまとまりつつあり、複数の論文として発表する予定である。現在、一部はすでに論文投稿中であり、他の部分は論文執筆中である。複製開始ストレス時のレスキュー機構についても、重要な機能因子の解析がかなり遂行したため、現在、関連因子について解析中である。 DDAH系や RIDA系への制御因子の検討も研究計画に従って進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に進展しているため、今後も研究計画に従って、さらに推進してゆく。DnaB導入の分子動態の機構については、現時点で論文投稿中であるが、すでにその成果を元にして発展的に展開する研究を進めている。2022年度は本基盤B研究計画の最終年度であるので、成果をまとめて学会発表するのみならず、論文の作成と発表にも注力してゆく。
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