研究課題/領域番号 |
20H03214
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
土屋 光 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基礎医科学研究分野, 主任研究員 (90760132)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 蛋白質分解 |
研究実績の概要 |
プロテアソームはユビキチン化タンパク質の分解により広範な細胞機能を制御しているが、プロテアソーム基質の選別機構やプロテアソーム自身の活性制御機構は未だ不明な点が多い。細胞内でプロテアソームと一過的に相互作用するタンパク質群のプロテオミクス解析を実施したところ、ユビキチンリガーゼUBE3A(アンジェルマン症候群・自閉症の責任遺伝子、さらに子宮頸がんに関与)を同定した。まず、UBE3Aがプロテアソームと直接結合すること、プロテアソームのユビキチン受容体PSMD4(Rpn10)との結合が重要であることを明らかとした。ドメイン解析により、UBE3AのN末端領域のZinc finger ドメイン(AZUL: amino-terminal Zn2+-binding N-terminal domain of UBE3A)とPSMD4のC末端領域の機能未知ドメインが相互作用に必須であることが明らかとなった。さらに、UBE3AのAZULドメインとPSMD4 C末端領域の結晶構造解析に成功し、PSMD4のhelix-turn-helix構造とAZUL domainのhelix構造が相互作用に重要でありUBE3Aのプロテアソームへのリクルートに必須であることが分かった。次いで試験管内再構成系により、UBE3Aは主にPSMD4をユビキチン化すること、UBE3Aによりユビキチン化されたプロテアソームは基質の分解速度が遅延することが明らかとなった。よって、UBE3Aはプロテアソームに直接結合しユビキチン化することで、プロテアソームによるタンパク質分解を負に制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
構造解析をもとにした点変異を導入することにより、UBE3AのN末端領域のZinc finger ドメインとPSMD4のC末端領域の機能未知ドメインが相互作用に必須であることを明確にすることができたため。さらに、試験管内再構成系により、UBE3Aは主にPSMD4をユビキチン化すること、UBE3Aによりユビキチン化されたプロテアソームは基質の分解速度が遅延することを明らかとした。よって、UBE3Aはプロテアソームに直接結合しユビキチン化することで、プロテアソームによるタンパク質分解を負に制御することがを示唆するデータが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
同定したプロテアソームと結合性ユビキチンリガーゼがプロテアソームと相互作用する意義の解明を試みる。プロテアソームとの結合能を欠損させたユビキチンリガーゼ発現細胞を樹立し、既知の基質の分解に及ぼす影響を検討する。また、ユビキチン化基質を網羅的に同定・定量することによりシャトル分子とユビキチンリガーゼのプロテアソーム上での基質選択性を検討する。ユビキチン化されたタンパク質をトリプシン消化すると、ユビキチン由来配列(C末端diGly) が基質タンパク質のリジン残基に負荷した特徴的なユビキチン化ペプチド(diGly-Lys)が生じる。研究代表者らはユビキチン鎖に対する高親和性プローブTR-TUBEと抗diGly-Lys抗体を組み合わせたユビキチン化基質の網羅的同定法を確立している。そこで、WTおよび各種ノックアウト細胞からTR-TUBEを用いたアフィニティー精製によりユビキチン化タンパク質を調製し、トリプシンで消化する。次いで抗diGly-Lys抗体によりユビキチン化ペプチドを濃縮し、高分解能質量分析計を用いたショットガン解析をおこなう。さらに、ユビキチン化ペプチドのプレカーサーイオンのピーク面積を指標とした半定量解析により量的な変動も解析する。また、ユビキチン化基質分解へ与える影響を試験管内でのプロテアソーム分解再構築系にて直接評価するプロテアソームへの結合が基質分解に必須であるか否かを検討する。
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