従来、ユビキチン化された基質タンパク質はプロテアソームに直接認識され分解されると信じられてきたが、プロテアソームと一過的かつ極微量に相互作用する様々な相互作用タンパク質群がプロテアソームの活性を制御することがわかってきた。我々はプロテアソームと相互作用するタンパク質群の解析によりユビキチンリガーゼE6APがプロテアソームと相互作用することを見出した。さらに、E6APがRpn10(ユビキチン受容体)の機能未知ドメインに相互作用し、新生不良タンパク質の分解に関与することを明らかとした。ストレス依存的なタンパク質分解機構の解析のためプロテアソーム及び PIPs の局在解析を実施した。その結果、タンパク質毒性ストレスによりプロテアソームが顆粒構造を形成することを見出した。この顆粒構造は刺激を除くと解消されることから可逆的かつ一過的な構造体であることが明らかとなった。よって、この構造体はほぼ球状の形状をもち、液-液相分離により生じたドロップレット(液滴)であることが推察された。また、免疫染色の結果、この構造体はユビキチンおよび E6AP 陽性であることが明らかとなった。さらに、ユビキチンリガーゼUBE3BもRpn10の新規結合ドメインと相互作用することを見出した。 E6APの変異がアンジェルマン症候群(重度の発育・精神遅滞疾患)の原因遺伝子として30年以上解析されているが、その機能に関しては殆どわかっていない。本研究はプロテアソームとの相互作用の観点から疾患性のユビキチンリガーゼの機能を解析するものであり、新たな治療薬開発の分子基盤になることが期待される。また、これまでプロテアソームが直接ユビキチン化基質を認識するという従来のモデルに対し、「ユビキチンリガーゼにより プロテアソーム上で基質の分解活性が制御される」というユビキチン・プロテアソーム系の基本的な作動機構に ついて新規に提案している点で学術的意義が高い。
|