研究課題
ヒドロゲナーゼは多くの微生物が持つ金属酵素で、水素分子の分解や合成を可逆的に触媒する。本研究では、2つのタイプの[FeFe]ヒドロゲナーゼの反応機構の解明を目指した。電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼは、2つの異なる酸化還元電位をもつ電子伝達体(フェレドキシンとNADH)から電子を受け取り、2核鉄錯体の活性中心であるHクラスターで水素分子を生成する。この特異な電子伝達に関して、どのようにして活性中心へ電子やプロトンが伝達されるのか(活性中心やフラビン・[FeS]クラスターの酸化還元状態)を、分光学的手法や構造解析により明らかにした。また、水素センサーと考えられている調節型[FeFe]ヒドロゲナーゼの活性中心の酸化還元状態を分光学的手法により明らかにした。[FeFe]ヒドロゲナーゼ遺伝子(電子伝達分岐型HydABCと調節型HydS)を、それぞれベクターに導入し大腸菌による発現系を構築しモデル化合物を挿入することによって人工的に成熟化した。これらの[FeFe]ヒドロゲナーゼのさまざまな酸化還元状態を電気化学的FTIR分光法で解析した。調節型[FeFe]ヒドロゲナーゼ の活性中心近傍のプロトン輸送経路と予想されるアミノ酸に対して変異体を導入し水素酸化活性を測定し、 ある変異体(S267M)で水素酸化活性がほとんど消失していることを明らかにした。第2配位圏の違いにより活性中心の鉄硫黄クラスターの酸化還元電位が変化することが明らかとなった。さらに、電子伝達分岐型[FeFe]ヒドロゲナーゼのクライオ電子顕微鏡法による構造解析をマックスプランク研究所と英国ヨーク大学と共同で行った。その結果、3つのサブユニットで構成される[FeFe]ヒドロゲナーゼが4量体を構成していることが明らかとなった。また、フェレドキシン様ドメインがZnイオンを介して開閉する動きをすることが明らかとなった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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