研究課題
本研究では、生理学的に重要な膜輸送体に関して、クライオ電子顕微鏡による構造解析を行うことで、輸送サイクルにおける複雑な動的構造変化を明らかにすることを目的として研究を行った。P型輸送体は主に金属カチオンを基質として持つ輸送体からなるが、5型に分類される二つのサブファミリー(P5A、P5B)の輸送体は、基質の種類や選択性が大きく異なる。P5Bに分類されるP5-ATPase(ATP13A2)は、老化に伴う神経変性疾患の原因遺伝子として特定されたが、その機能は長い間不明であった。近年になって、この輸送体がリソソームにおけるポリアミン排出輸送体であることが明らかになり、老化に伴って低下するポリアミン合成を補うように、細胞外からの取り込み経路に関わることが明らかとなった。クライオ電子顕微鏡によって、ヒトATP13A2の基質が結合していない状態(E1)、および基質が結合した状態(E2)の二状態を含む合計4つの構造を明らかにした。それらの構造の比較から、ATPを用いた自己リン酸化に伴って、細胞内側に長細い正荷電性のトンネルが形成し、そこにポリアミンが結合することが明らかになった。さらに変異体解析を行ったところ、このトンネル内の負電荷性アミノ酸、芳香族アミノ酸がポリアミン輸送に重要であることが分かった。トンネル内に収まることのできるポリアミンであれば、ある程度非選択的に輸送することができることから、線形ポリアミンに対する幅広い基質選択性の分子機構が明らかになった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nature Communications
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