研究課題/領域番号 |
20H03225
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森垣 憲一 神戸大学, バイオシグナル総合研究センター, 准教授 (10358179)
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研究分担者 |
林 文夫 神戸大学, 理学研究科, 名誉教授 (80093524)
鈴木 健一 岐阜大学, 高等研究院, 教授 (50423059)
笠井 倫志 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (20447949)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体膜 / ラフト / 人工膜 / GPCR |
研究実績の概要 |
細胞膜の微小ドメイン構造(ラフト)は、膜タンパク質の機能調節に重要な役割を果たすと考えられている。研究代表者は、ラフト領域と非ラフト領域が明確に分かれているパターン化人工膜を用いて、膜タンパク質のラフト親和性を定量する手法を開発した。本研究は、人工膜と接する厚さ100nm以下のナノ空間に、細胞内のような高濃度のタンパク質やリガンドが存在する微小環境を再現し、それらと膜タンパク質との結合・解離を1分子蛍光観察で定量的に評価することを目的とする。2020年度には、①人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製、②パターン化人工膜への膜タンパク質の再構成、に関する技術開発を行った。 ①人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製:人工膜としては、光重合性リン脂質を光リソグラフィー技術でUV重合することでポリマー脂質膜を作製した。ナノ空間は、厚さの制御された接着層(高密度な親水性高分子鎖(高分子ブラシ)を被覆したシリカ微粒子)を用いて人工膜とPDMSを結合することで作製した。粒径100 nmのナノ粒子を用いることで、流動性脂質膜部位の膜とPDMSの間に同程度の厚さを持つナノ空間が形成された。 ②パターン化人工膜への膜タンパク質の再構成:細胞由来の膜断片(blebs)を用いて、哺乳類細胞の膜タンパク質を人工膜に直接導入する技術を開発した。精神疾患に関わる重要なGPCRであるドーパミン受容体(D2R)をCHO細胞に発現し薬剤処理で膜断片を形成した。膜断片を導入する際の濃度を低く抑えることで、膜断片を平面膜化してD2Rが区画内で側方拡散していることを確認した。また、PDMSとの境界領域においては、区画内に多量のD2Rが導入され、分子が2次元拡散していることを確認した。また、D2Rが生理的な活性を持つことを二量体形成寿命、アンタゴニストの結合などで示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、人工膜と接する厚さ100nm以下のナノ空間に、細胞内のような高濃度のタンパク質やリガンドが存在する微小環境を再現し、それらと膜タンパク質との結合・解離を1分子蛍光観察で定量的に評価することを目的としている。2020年度には、①人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製、②パターン化人工膜への膜タンパク質の再構成、に関する技術開発を行った。人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製では、光重合性リン脂質を光リソグラフィー技術でUV重合することでポリマー脂質膜を作製した。ナノ空間は、厚さの制御された接着層(高密度な親水性高分子鎖(高分子ブラシ)を被覆したシリカ微粒子)を用いて人工膜とPDMSを結合することで作製した。粒径100 nmのナノ粒子を用いることで、流動性脂質膜部位の膜とPDMSの間に同程度の厚さを持つナノ空間が形成された。パターン化人工膜への膜タンパク質の再構成では、細胞由来の膜断片(blebs)を用いて、哺乳類細胞の膜タンパク質を人工膜に直接導入する技術を開発した。精神疾患に関わる重要なGPCRであるドーパミン受容体(D2R)をCHO細胞に発現し薬剤処理で膜断片を形成した。膜断片を導入する際の濃度を低く抑えることで、膜断片を平面膜化してD2Rが区画内で側方拡散していることを確認した。また、PDMSとの境界領域においては、区画内に多量のD2Rが導入され、分子が2次元拡散していることを確認した。また、D2Rが生理的な活性を持つことを二量体形成寿命、アンタゴニストの結合などで示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、以下の検討を行うことでパターン化人工膜およびナノ空間を作製し、膜タンパク質の分子物性を定量的に評価する技術を開発したい。 ①人工膜とナノ空間を一体化したバイオチップ作製:これまでの検討からナノ空間を作製することが可能になった。一方、ナノ空間の厚さや内部での分子拡散はまだ道である。今年度は、シリカ微粒子の粒径を変えてナノ空間の厚さを制御し、ナノ空間での分子の側方拡散速度が厚さによってどのように制御されるかを検証する。 ②パターン化人工膜への膜タンパク質の再構成:昨年度には、PDMSとパターン化人工膜の界面において細胞由来の膜断片(blebs)から多くの膜タンパク質が導入されていることを確認した。今年度は、この研究成果を発展させて、厚さの制御された空間での再構成を行う。ナノギャップ構造を用いてPDMSとパターン化人工膜との距離を制御し、膜タンパク質導入機構を解明し、多量の膜タンパク質を高感度に検出する方法論を確立する。 ③膜タンパク質のラフト親和性測定:ナノ空間を組み合わせた人工膜において、再構成された膜タンパク質のうち、膜内側方拡散により観察部位に移動できる分子のみを選択的に観察する。膜タンパク質としては、既に人工膜でラフト親和性の定量がなされているRhを用いて、視細胞由来の膜断片からRh分子を再構成し、lo相・ld相での存在確率からラフト親和性を定量する。また、D2Rについてもラフト親和性を定量する。
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