研究課題/領域番号 |
20H03233
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大学 保一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (80619875)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 突然変異生成 / DNA複製 / DNAポリメラーゼ |
研究実績の概要 |
<ポリメラーゼδ コンポーネントの増減によるポリメラーゼζ機能への影響> 細胞抽出液を分画し,細胞内のDNAポリメラーゼδサブユニットのタンパク質をウェスタンブロッティングで可視化した結果, Cdc6(DNAポリメラーゼδのカタリティック因子)は,Cdc1(DNAポリメラーゼδ・DNAポリメラーゼζの共通因子)よりもクロマチン画分に豊富に存在していた.また,細胞をG1/S境界期に同調し,細胞周期再開後のDNAポリメラーゼδサブユニットの量的変化を観察した結果,Cdc6因子は,S期後半からG2期にかけて減少することが確認された.一方,Cdc1因子においては,細胞周期を通じて,大きな量的変化が見られなかった.これらの結果から,細胞内でCdc6の量に対するCdc1の量がDNA複製後期に増加し,DNAポリメラーゼζとCdc1因子が物理的に相互作用するチャンスが高まると考察される.DNAポリメラーゼ δサブユニット(Cdc6/ Cdc1/ Cdc27)の過剰発現を誘導し,UV照射による突然変異頻度を測定した結果,Cdc1因子の過剰発現株では,DNAポリメラーゼζ依存的な突然変異の発生が増加した.一方,Cdc27の過剰発現株は,紫外線照射による突然変異の発生頻度は野生株と同程度であった.これらのことから,予想した通り,Cdc1因子の細胞内での量に応じてDNAポリメラーゼζの機能が制御されることを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,Cdc1の量がPolζの機能に密接に関わることを明らかにした点は新規の発見であり,Polζの細胞内での機能制御機構を理解する上で重要な知見が得られた.このような理由から,本年度の計画通り研究が進展したと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度(2022年度)においては,過去2年間の成果を元に,Polδの各コンポーネント(Cdc6、Cdc1、Cdc27)の発現量をコントロール可能な分裂酵母株を使用して,Polζの分子動態に及ぼす影響を観察する予定であり,状況次第では,ヒト細胞におけるPolζ合成領域を同定する実験も行う予定である.これらの試験結果により,Polδの機能制御機構を総合的に明らかにすることを目指す.
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