<Polδコンポーネントの増減によるPolζ機能への影響> 2年次に構築したPolδの各コンポーネント(Cdc6、Cdc1、Cdc27)の発現量をコントロール可能な分裂酵母株を使用して、Polδ(デルタ)・Polζ(ゼータ)サブユニットの核内空間配置の変化を検証した。その結果、これらのタンパク質の発現量に応じた、Polδ・Polζそれぞれのカタリティックサブユニット(Cdc6、Rev3)の核内分布に変化は見られなかった。Cdc6の場合は、比較的、存在量の多いタンパク質であったせいか、どの条件においても核内に一様に存在していた。Rev3の場合は、逆に非常に数か少ないタンパク質のせいか、検出限界に近い状況での観察であり、明確な差異の観察することが困難であった。Rev3の解析においては、今後、1分子レベルでの観察(PALM、STORM法など)が必要であると考える。 <ヒト細胞におけるPolζ合成領域の同定> 研究代表者は、現在までに、ヒト培養細胞HCT116を用いて、特定のDNAポリメラーゼの活性部位を変異させ、そのポリメラーゼによるゲノムDNA中へのリボヌクレオチドの取り込みを誘導し、リボヌクレオチドの分布を指標として特定のポリメラーゼの合成領域を解析する方法を確立している。この方法をPolζに応用するために、必要な細胞株を作成を行った。現在までに、リボヌクレオチドを取り込むPolζノックイン細胞株の作成が完了した。現況では、Polζの合成領域を同定するために実験条件(ゲノDNAからリボヌクレオチドを除去する酵素RNASEH2を分解するための方法など)を検討している状況であり、今後も継続した実験、および、解析が必要である。
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