研究課題
リキッドバイオプシーは低侵襲的に採取できる液性検体を用いて、細胞から放出された核酸(DNA、RNA)を解析することにより、体内深部組織の分子状態を推定する技術であり、がんゲノム医療など、幅広い分野で応用が進んでいる。本研究では、この手法を宇宙飛行士の参加する臨床研究に応用し、宇宙環境における体内組織の変化を調査した。同様の手法はこれまでにマウスを用いた宇宙フライト実験でも行われており、その過程で得られた知見をヒトでも確認することを目標とした。本研究では、国際宇宙ステーションでの滞在前、滞在中、帰還後の11のタイムポイントで6名の宇宙飛行士から血液検体を採取し、血漿中の細胞外RNA(セルフリーRNA、cfRNA)、DNA(cfDNA)の解析を行った。RNAシーケンス解析では、ミトコンドリアと細胞外基質に関連する遺伝子に由来するRNAの顕著な変化が見られた。さらに組織特異的な遺伝子のプロファイルを解析することで、宇宙環境で応答する組織や細胞種を予想することができた。ミトコンドリアRNAの変化は、マウス実験の宇宙の微小重力環境での飼育と人工1G環境を比較した実験でも同様の変化が見られ、ヒトとマウスでミトコンドリアの変化が共通して確認でき、さらに重力環境の変化がその変化の要因の一つであることが示された。ミトコンドリアDNAを含む血漿分画を濃縮する細胞抗原を認識する抗体パネルのスクリーニングを行い、細胞外ミトコンドリアがエンリッチされた分画を得た。この分画に含まれるRNAのシーケンス解析結果から、脳を含む幅広い体内組織種がこの分画の由来組織として推定された。今後はこれらの組織でミトコンドリア機能の変化が起こっているのかをマウス実験系などを用いて検証するとともに、ヒトにおいても地上の疾患等との類似性があるのか、検討が期待される。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Patterns
巻: 3 ページ: 100550~100550
10.1016/j.patter.2022.100550
https://osdr.nasa.gov/bio/repo/data/studies/OSD-530
https://osdr.nasa.gov/bio/repo/data/studies/OSD-532