研究課題/領域番号 |
20H03238
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
末次 正幸 立教大学, 理学部, 教授 (00363341)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再構成生物学 / 染色体複製 / 大腸菌 / ゲノム動態 |
研究実績の概要 |
大腸菌染色体複製のサイクルを再構成した複製サイクル再構成系では、ゲノムサイズの環状DNA分子の指数的な増幅が達成される。大腸菌をモデルとした研究では、複製系以外にも転写・翻訳、DNA修復、組換え、複製周期制御など、ゲノムにまつわる多くのシステムが試験管内再構成されている。本研究ではこれらシステムを複製サイクル再構成系に融合し、ゲノム動態の統合的な再現を目指す。システムだけでなくゲノム(染色体)自体を試験管内に取り出しての再現も進める。試験管内に高度に再現されたゲノム動態に対し、従来細胞を対象に用いられてきたオミックス的解析手法を適用し、新しいアプローチでゲノム機能に迫る。 初年度となる当該年度では、染色体複製サイクル再構成系に転写再構成系を融合し、同じミニ染色体上で、複製反応、転写反応が相互に及ぼす影響について解析を進めた。従来までにT7ファージのRNAポリメラーゼを用いた転写反応を組み合わせていたが、実際の細胞内の反応を再現すべく大腸菌RNAポリメラーゼを用いた転写反応との融合を行った。この複製・転写融合系において、複製と転写が効率よく共役して進行する条件を検討し、その共役に必要ないくつかの因子を同定した。そして、これらの因子の効果についてリアルタイムPCRをもちいた定量的なデータも得た。 さらに、染色体自体を試験管内に取り出して生化学的解析に用いる実験に対しては、染色体を大腸菌からスーパーコイルDNAとして壊さずに精製する技術を構築した。通常の大腸菌ゲノムは4.6Mbサイズで壊さずに精製することが難しいが、我々は染色体を分断する技術を独自に開発し、得られた1Mb分断染色体であればスーパーコイルDNAとして精製可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大腸菌染色体複製サイクル再構成系と大腸菌RNAポリメラーゼを用いた転写反応との共役系の検討をすすめ、共役に機能する因子を同定した。そして、当該因子が複製反応に及ぼす影響についてリアルタイムPCRをもちいて定量的に解析することに成功した。 また、大腸菌染色体4.6Mbを壊さずに精製することがこれまで難しかったが、新たに染色体を分割し1Mbの分割染色体を構築する新手法を確立した。この方法によって得られた1Mb染色体を、環状スーパーコイルDNAとして大腸菌から精製することに至った。
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今後の研究の推進方策 |
複製と転写の共役系については、さらに翻訳反応を組み合わせ、自己複製系の構築をすすめる。また複製と転写との衝突方向の影響についても検討する。 1Mb染色体をスーパーコイルDNAとして精製できるようになったので、まずはこの1Mb染色体DNAを複製サイクル再構成系で増幅できるかを検討し、無細胞転写翻訳系など各種アッセイでの検討を進める。
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